「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

◎「日本一新運動」の原点―224

                                日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

○日本国憲法と「国連の集団安全保障」(1)

 理屈っぽい話が続いて恐縮だが、日本国のあり方を規定する重要な問題なので続けることをご寛容いただきたい。安倍内閣が、「集団的自衛権の行使」を、憲法の解釈変更で閣議決定した際、公明党の反発で『国連の集団安全保障』は触れていなかった。

 ところが、7月14・15日の両日、国会の集中審議が行われ、安倍首相は「国連の集団安全保障への参加もあり得る」旨を発言した。この問題は、平成2年(1990年)の湾岸戦争の時に発生し、米ソ冷戦終結直後のことで、初めて国連がそれなりの機能を果たした事件であった。わが国にとっては、一国平和主義外交を転換すべき重大な問題で、政府・与野党とも大混乱した。

 私の手元に戦後日本の代表的文明評論家で、護憲の神様・加藤周一氏と私が「国連の集団安全保障と憲法九条」についての議論を要約した記録がある。先ずは、先入観を持たずにこれをお読みいただきたい。

(平成12年11月27日・参議院憲法調査会会議録より)

○加藤周一 
 (集団安全保障とは)自衛ではなく、国連の安全保障理事会による委託決議があったときに武力を使うことですが、これは実際的にそういう武力介入が効果があったかは大体大いに疑問なんです。
 例えば、湾岸戦争は国連の委託があってやった戦争ですから、イラクがクウェートに侵入した非合法な国際法違反に対して、安保理の委託があって、合法的な介入と言えると思います。
 ただ、どういう目的を達成するための戦争だったかというと、それはイラク懲罰という以外に余りない。クウェートからの撤退は必ずしもあれほどの大戦争をしなくとも、既にほとんど成就されていたわけで、どういう目的を湾岸戦争が達成したかという点からいえば、大変疑わしい。
 そういうわけで、国連の安保理の委託があれば戦争が正当化されるというのは疑わしいですね。

 日本に関してもうひと言申し上げておきたいと思うんですが、現実には日本の再武装で自衛隊があって、憲法と矛盾してるんじゃないかという議論が当然あるかと思うんです。
 特に今の憲法9条に関しては、これはいわゆる解釈改憲で、政策をとってだんだん軍備が増大したから現実を離れたと思うんですね。だから、現在の問題は、憲法を現実に近づけるか、現実を憲法に近づけるか、どっちかということになると思う。
 それが根本的な仕方ですね。

 結論は、今後の日本の行き先としては、世界で早く徹底した平和主義をとったから先取り憲法というだけではなく、日本の将来にとって有効な政策を憲法が先取りしているという風に考えます。変えるより変えない方が良い。何故ならば、憲法に現れていることを実現することが日本の将来を開くのであって、憲法を変えて現実に近づけることが将来を開くんじゃないんですね。

○平野貞夫 
 自由党の平野です。私は過去40年の間に政治関係の本で一番感動したのは、加藤先生の『日本文学序説(上)』でした。「土着の世界観が普遍的な外来文化を日本化する」という日本文化の分析です。私はこれを「日本人は政治的つまみ食いの天才」と言い換え、衆議院事務局時代に歪な日本の議会政治で活用させてきました。

 そこでお尋ねしますが、先生がおっしゃった、憲法を現実に合わせる、この「を」と「に」の使い方、その通りと思います。
 しかし、(国連の集団安全保障と)この憲法9条の問題は、実は憲法を現実に合わせる問題ではなくて、憲法をつくった帝国議会の審議で問題になったことです。と申しますのは、南原繁東大総長が貴族院で憲法9条を高く評価した上で、吉田首相に日本が国連に入るとき問題になるんではないかと。日本は大東亜戦争の責任、過ち、これを反省するのが当然だと。それからいえば、国連に入る時にはその反省、責任を踏まえて、国連をなるべく機能できるように整備することに日本が一番努力すべきじゃないか。そして、その上で国連に警察機能というか、国連常設軍と言ってもいいと思いますが、こういうものができた場合には率先して積極的に世界の平和の維持、あるいは困った人の助けに、人道的な活動に大いに参加すべきではないかと南原東大総長は吉田首相に尋ねています。

 そして、国連に参入したときに憲法を改正するのか、あるいはこの憲法で対応するのかということを詰めておりますが吉田首相は何も言わず、金森憲法大臣も答弁しきれないままの問題になっております。従いまして、私はこの問題は現在の問題だけではなくて、憲法制定のときからの問題だと思っています。

 私たちはこの南原先生の憲法九条整備論を今主張しているわけです。確かに国連の機能に限界はございます。しかし、国連しかないのです。私たちは憲法9条を変えようというのではありません。より9条の精神を整備しようという意見です。
 ご意見を賜りたいと思います。

○加藤周一 
 今の意見の方はほとんど賛成ですが、ただ条件つきでね。国連軍といったものに参加する道を開くべきだとおっしゃっているわけでしょう。それはその通りだと思います。但し、その国連軍は今まではないわけですね。だから国連軍ができるような条件をつくらなきゃ・・・。

 おっしゃるように国連以外に国際機関はない。だから、あれをできるだけ良くするより手がないことも賛成だし、それから、もし世界政府の方向へ動いていった段階で国連軍ができるだろうと。その時日本はそこに軍隊を入れることは大いに考えるべきだと、それも賛成です。ただ、現在の段階としては遙かに遠いですよね、それは。遠い先の話としてはおっしゃることにはほとんど全部賛成だけれども、ただ現在の段階としてはちょっとそれは離れていると思いますね。

○平野貞夫 
 現在の段階で離れていることもよくわかります。理想論かも知れませんが、やはり日本国民があの戦争を経た反省として希求しなければならない問題と思っています。ただ、私は多分先生と意見が合うんじゃないかと思うんです。
 確かに今はそれを早くやると危ないという気持ちはいたします。それは、そういう理想の時期に距離があるというんじゃなくて、果たして日本の国が民主主義の国か(同年4月の森首相誕生の違憲性など)、むしろ、危うさがあると思います。私は、日本のデモクラシーの定着について、非常に悲観しております。
 デモクラシーが定着してくれば、私は9条の整備をしても大丈夫だと思うんですが・・・・・。

 加藤先生は、21世紀は日本で民主主義を育てる世紀だと言われていますが、私は最近の議会政治をみるに、21世紀を迎えてますます日本の民主主義が悪くなっていると思っています。
 市民革命、明治維新をもう一回やり直さなきゃいかぬかという感じを持っています。

○加藤周一 
 日本社会には本当の自由が浸透していない。平等主義も機会の平等ではない。皆が同じことをするという平等主義だ。日本の現状は、民主主義の線ではなくて民主主義から逸れていく線だと思いますね。
 そういう条件のもとで軍備をやるということは危険なことになる。日本の場合、民主主義的な伝統がバランスすれば、どうにかやっていけるわけだけども、そのバランスが弱ければその危険は大きくなるわけね。だから、その意味でも軍備を急がない方がいいということですね。

 加藤周一氏と私の議論から14年という月日が流れた。加藤氏の国会招致は土井たか子社民党委員長の企みで、加藤氏を使って、当時、小沢自由党が研究していた「国連の集団安全保障への参加」を牽制するためだった。

 この論議を傍聴していた土井委員長は、加藤氏が私の論旨に賛成したのを機会に、小沢党首と憲法9条について定期懇談を行うことになる。私も同席して安全保障のコンセンサスをつくることに努力した。

 加藤氏と私で一致したことは日本の民主主義への不安さである。

 その後の劣化は改めていうまでもなく至って深刻である。安全保障政策の健全な展開は民主主義の定着とバランス力の存在が必須条件である。その視点に立てば、安倍自公政権の民主主義への危険度は、はっきりと限界を超えたと思う。日本の民主主義がきわめて危険な状況で、安全保障問題を整備していくことは困難なことである。しかし、政権側が立憲主義を無視して強行するなら、正当な主張を国民に理解して貰わなければならない。
                                                     (了)

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