「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

◎「日本一新運動」の原点―228

                                日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

○日本国憲法と「国連の集団安全保障」(5)

 湾岸紛争が発生して1ヶ月経った九月の始め、総理官邸から私の職場・衆議院事務局委員部長室に1本の電話があった。山口鶴男社会党書記長からである。場違いのところに、場違いの人からの電話だった。「今、海部総理に土井委員長と湾岸紛争への対応で申し入れをしているところだ。16年前の石油危機のとき前尾議長や海部議運理事らとクウェートに行った話をしているんだ。
議長秘書の君が夕食会で前尾議長に叱られた話だよ」。

 私にとっては昔の失敗談だ。内輪の夕食会で、酒が入った私は訪問したクウェートの宮殿で何か起こると高速艇で逃げられるようにしていること、石油採掘現場などには、すべて各部族が外国からの傭兵で防衛させている様子を見て、「オイルマネーだけで国が護れるはずはない。これだと20年も持たない」と放言したことだ。前尾議長が「招待を受けている国に失礼なことを言ってはいけない。国にはいろんな事情があるんだ」と注意を受けた話だ。
 社会党の山口書記長といえば、自社55年体制の馴れ合い政治を代表する政治家だ。「平野君の勘は当たったが、湾岸紛争問題で小沢幹事長と難しい議論をしていると、海部首相が困るよ」と、軽く攻めてくる。海部首相が愚痴っている様子がよくわかる。
「小沢幹事長は憲法を徹底的に勉強しており、憲法制定に参加した権威者である佐藤功博士の理論を活用しようと、真剣勝負ですよ」と応戦しておいた。
「湾岸紛争」の勃発で、「政治改革」は吹き飛んだがポスト冷戦の世界で日本が生きていく理念づくりでは、「国連中心の安全保障」と「政治改革」は同質の基本問題であった。

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 中間略
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(「国連平和協力法案」廃案へのドラマ)

 国連平和協力法案は、さまざまな政治経過があって、自公民3党による「国際平和協力に関する合意書」ができ、廃案となる。
これにはポスト冷戦をめぐる政治ドラマがあった。今の政治家も参考にしてもらいたい。

 10月23日午後、金丸信氏を担当する朝日新聞の木村記者(現社長の木村伊量氏)が委員部長室に来訪。「今朝、金丸さんの話だと『昨夜、小沢に協力法案は徹底的に野党に妥協せよと言っておいた。黙って聞いていたから、そうするだろう』と言っていた。これからの見通しはどうなるか」との問い。「衆議院で継続審査か廃案だが、それを決めるまでに各党間でどんな協議をするかだ」と答えておいた。

 2日後の25日深夜、創価学会N氏(秋谷会長秘書役)から呼びだしを受ける。秋谷会長が市川書記長らと重要協議をした直後だった。用件は「小沢幹事長の安全保障の問題提起は大事なこと。
協力法案はマスコミが自衛隊派遣→戦争への道への流れをつくった。一度廃案として出直しすべきだ。小沢さんの顔は立てるので政党間協議をするよう説得して欲しい」だった。私は「小沢さんの説得は市川さんの仕事だ。私の仕事は相談があれば意見は言う。
小沢さんの腹は、立場があるので継続にして各党協議が限度だ。
もう少し困らせたら」と返しておいた。

 27日午後、朝日の中島記者から「市川書記長が『協力法案は廃案で協議に入る。幹事長・書記長会談になるだろう』と話しているので、明日の朝刊で『廃案へ』と書く」との電話がある。
「(新聞記事について)私に相談することではない。どうぞご勝手に!」と応じた。翌28日の朝刊トップで「協力法案、不成立の公算大」と大見出しで報道された。同日夜、朝日の早野透記者から「小沢幹事長が岡山市の記者会見で『よりよい智恵が各党協議で出れば、直すのは当然』と語ったが、どうなるのか?」との電話がある。経過を説明し「修正に応じてもよいとの与党内を配慮したものだが、ここはスパッと引いた方が、小沢さん本人のためになる」と解説したところ、翌29日の朝日朝刊は「協力法案、廃案にして作り直す用意 自民幹事長」と一面トップで報じた。

 2度にわたる朝日の「協力法案潰し報道」に、小沢幹事長は怒り心頭に発し朝日記者団と絶縁状態となった。これを知った金丸氏が、30日、福島市での講演で「野党の意見を入れてより良い立法をするため、協力法案を廃案にすることもやむを得ない」と発言した。11月1日の朝日新聞は、広瀬道貞記者(前民放連会長)の署名入りで「これまでの安全保障について憲法の運用を検討する必要がある」との論文を、社論として掲載した。
 これは小沢幹事長の国連による安全保障論を評価するもので、画期的なものであった。小沢幹事長は「自分の問題提起で朝日の社論が変わった」とし、険悪になっていた関係を修復した。
 4日(日)の愛知県参議院補欠選挙で、不利と予想されていた自民党が勝利し、翌5日、海部首相と小沢幹事長が会談。「協力法案」の取扱を小沢幹事長に一任した。その日の午後、朝日の社会党担当記者が委員部長室に来訪。「土井委員長からの伝言がある」とのこと。持参したメモを見ると「自衛隊を別組織とするなら党内を説得する」というものだった。
                                                      (続く)


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