「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―82

日本一新の会・代表 平野 貞夫

 

     TPP問題の本質を考える


 11月11日(金)、野田首相は記者会見で「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と述べ、民主党内の慎重派は、「事前協議」と解釈して一応は矛を収めた。みんなの党を除く野党は野田首相の記者会見発言を「ごまかし」として厳しく批判した。野田首相は、ハワイで開かれたAPEC首脳会議でTPPへの交渉参加の方針を伝え、事実上の参加交渉が始まったといえる。

 TPP交渉参加問題は、国会でも集中審議が行われ国民的関心も高まったが、問題の本質はほとんど議論されていない。野田首相は11日の記者会見で、TPP交渉参加の協議にあたって次の2点を強調した。

 一つは「世界に誇る日本の医療制度、日本の伝統文化、うつくしい農村、そうしたものは断固として守り抜き、分厚い中間層によって支えられる安定した社会の再構築を実現する決意だ」と語る一方で、「貿易立国として、活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかねばならない」と語っている。

 一見、耳ざわりの良いもっともらしい意見である。これが20世紀時代の、まだ資本主義に健全さが残っていて、右肩上がりの経済成長が期待されている頃なら、私にもまったく異論はない。20世紀型の資本主義が崩壊して、米国投機資本主義の破綻、ギリシャ・イタリアをはじめ、EU諸国の経済状況は既に「世界恐慌」に入っているといっても過言ではない。野田首相の見解が通用する事態ではないことは明らかである。

 TPP参加交渉についてさまざまな論議があるが、私が感心した論評をまず紹介しておく。朝日新聞の11月9日付の「声」欄にあった池田博男氏(千葉県白井市)の意見だ。板ガラスメーカーの社員で業界団体事務局出向中に関わった体験を述べながら次のように結論づけている。


 「
TPP問題の本質は、貧富の差の拡大を招く市場原理主義的米国型
資本主義の是非にあります。米国主導の資本主義では、何度も金融危機を繰り返し、格差社会を拡大することは誰の目にも明らかです。この際、対米追従を脱し、日本独自の資本主義を構築し、むしろ新興国と米国の架け橋として日本が存在感を出す道を模索すべき時です。」


 TPPについては、国会議員をはじめ有識者の意見や議論を聞いたり、読んだりしたがこの池田氏のような発想はなかった。特に米国資本主義の変質に対する歴史観をしっかりと持っている意見に感銘を受けた。

 経済や貿易に専門的知識を持った有識者ほど歴史観がなく、ガット・ウルグァイ・ラウンドやWTOと同じ感覚で、TPPを貿易自由化の技術論として論じている。米国が主導してきた排他的投機資本主義が崩壊段階に入り、米国内でも投機資本主義に対する反省の声が上がり、これからの市場原理社会をどう運営するのか混乱状態である。TPPをめぐる現時点での米政府の狙いは何か。ブッシュ前大統領が小泉・竹中政権に「郵政改革」という名で、「郵貯資金」を米国の金融資本の餌にしようとしたことと同根である。

 国会審議の中で、何人かの国会議員が「TPPに参加することで、日本の国の形が変わることになるかも知れない」と指摘する人がいた。私は「TPPの本質論になるか」と期待したが、それからが続かなかった。「国の形」とは、私に言わせれば、まずは我が国の資本主義の仕組みや性格の問題である。

 そこで私が不思議に思うのは、野田首相はじめ、TPP交渉参加の推進派も、慎重派も、そして反対派も、21世紀になって資本主義がどんな事態となり、米国なり日本なり、あるいは欧州でどんな矛盾をもち、途上国でどのような問題を抱えているのか、進行中の実態を理解していないことである。率直に言って、20世紀に役割を果たしていた「分厚い中間層が存在した福祉社会」という資本主義社会は、北欧の一部を除いて存在していない。

 ほとんどの先進資本主義国で、20世紀に機能した資本主義という「国の形」は破綻したと考えるべきである。従って、21世紀という情報社会にふさわしい資本主義のあり方を創造するのが、今を生きる私たちの責務である。TPPでの国会論議だけではなく、新聞やテレビでの有識者やコメンテーターの話が、21世紀の資本主義社会の原理や仕組みを前提にしたもので、まったく歴史観というか、時代の大変化を自覚していないことが混迷の原因でもある。

 我が国は、自由貿易のシステムの中で豊かな社会を作ってきた。これを健全に発展させることは日本にとって大事なことであるし、これからもこの姿勢を続けなければならないことは言うまでもない。しかし、議論されているTPPが本当に自由で健全な貿易システムなのか。日本国内でのTPP論争を見るに、推進論者の中の多くは米国の排他的投機資本主義、すなはち新自由主義を支持する人たちである。小泉政治が行ったこの政策は、平成19年の参議院選挙と、平成21年の衆議院総選挙で国民は拒否し、政権交代が行われた。

 米国が、新自由主義をベースとする排他的投機資本主義を改めない限り、TPPは真に自由で健全な貿易システムだとは言えない。国民が民主党に政権を託したその原点は「国民の生活が第一」という理念である。この考え方の延長には、21世紀に対応するあたらしい資本主義を創造しようとする発想があったはずだ。そのセーフティーネットは数項目にわたって公約されていた。

 これまでの20世紀型資本主義の時代では、排他的競争をしても敗者はそれを挽回する余裕があった。それが21世紀も20数年を経て、米国はマネーゲーム資本主義の悲劇を繰り返している。野田首相が「断固として守り抜く」と発言した事柄を崩壊させて、米国のマネーゲーム資本主義で日本を支配しようと言うのが、TPPの本質だ。

 野田首相がAPEC首脳会議でTPPについて語るのなら、米国に対して「ポスト・コロニアリズム」(潜在的占領植民地感情)を超えて、真に自由で公正な、21世紀の健全な資本主義を、共につくろうではないかとその哲学を何故に語らないのか。今や世界中の真面目に生きようとする人々が、真っ当な人間社会を作ることに立ち上がっているのだ。その先頭に立つ気概を語ることが首脳会議であり、我が国が世界のリーダーとなり得るのではないか。「米国牛肉の規制緩和について準備を始めている」などと、米国追随発言どころか、来年の大統領選挙のお手伝いをする根性に問題がある。

 恐らく、日米間の交渉ごとを仕切っている中心人物は「ポスト・コロニアリズム」に呪縛されている官僚・知識人であろう。彼らの振り付けで踊らされているのが野田首相の実像だと思う。各種世論調査を見ても、民主党の支持率が急速に下がっている。その原因は「国民の生活が第一」の理念を踏みにじった政治を民主党政権が続けているからだ。

 野田首相の「アジア太平洋地域の成長力を取り入れて、(日本の)活力ある社会を発展させていく」と言う意味の発言は、私には「アジア太平洋地域の人々を犠牲にしていく」としか聞こえない。「相互に活力ある社会をつくる」というのが21世紀のあたらしい資本主義でなければならない。そうでないと人間社会は破滅する。TPPにその思想はない。野田首相がTPP参加にこだわるなら、まずこの基本を主張すべきだ。

 ハワイのAPEC首脳会議からの発言をみるに、野田首相の二股膏薬発言を、TPPが一気に拡大するきっかけになったと評価する雰囲気を出しているが、とんでもないことだ。

 米国にとって、「飛んで火に入る夏の虫」となった日本に対して、早くも絶対に日本が了承できない要求を突きつけてきている。既に、対日要求文書の中に「KANPO」と「KYOSAI」という文字が入っていると報じられているし、この厳しい現実を直視すべきだ。
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