「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―108

 日本一新の会・代表 平野貞夫妙観

 

○消費税国会の攻防―平野貞夫衆議院事務局日記の公開について


 野田首相が政治生命ならぬ「生命を懸ける」と言明した『消費増税法案』等の国会審議がいよいよ始まるという5月、千倉書房から『消費税国会の攻防』(副題・平野貞夫 衆議院事務局日記)が刊行されることになった。週刊朝日の5月8日発売号に3ページにわたって採りあげてくれたので、読者諸兄のお目に止まったかも知れないが、有り難いことだ。

 口の悪い記者連中が、「平野さんのことだから、この時期を狙ってぶつけてきたのだろう」と語っているようだが、決してそうではない。消費税制度がどういう人たちの努力で、どういう思想でつくられたのか、その裏面史を出版したいと思っていたが、なかなかその機会がなかった。

 平成22年になって、菅首相が突然「消費税10%増税」などと、政権交代の原点を冒涜したことを切っ掛けに、「売上税廃案と消費税制度成立」の真実を国民に知ってもらいたいという衝動に駆られていた。

 丁度その頃、オーラル・ヒストリーの取材で、九州大学法学部准教授の赤坂幸一氏と、京都大学大学院法学研究科准教授の奈良岡聰智氏と定期的に会っていた時だった。私の構想を持ちかけると、直ちに千倉書房に持ち込んでくれた。当初は平成23年5月頃の出版予定であったが、いろいろな都合で1年遅れたわけである。これを「必然の中の偶然」というか、「偶然の中の必然」というか、私に説明は不可である。ただ一点、「神の配剤」といえることは確実である。

 ともかく、赤坂氏と奈良岡氏に感謝しなければならない。

 率直に言って、消費税制度の立法過程について、日本中で一番関わったのは小沢さんと私だ。然るに、消費税増税反対の小沢グループからは何の相談もない。消費税増税の恐ろしさを知らないからであると思う。彼らは租税制度と議会民主政治の歴史的つながりを考えたことがないからだ。本質的でない技術論で時間を浪費し、党内手続きでの多数決を民主政治の原点のように喚く野田総理や岡田副総理に反論しない国会議員は、最早、国民の代表者ではない。
 国民生活を破滅させ、財政を逆に悪化させることが確実な消費税増税に反対するのが、「国民の生活が第一」を約束して政権交代した民主党本来の責任であるはずだ。

 

(消費税制度についての基本的問題)


 多くの近代国家は、歴史的に所得税や法人税などの直接税で国家の財政を賄ってきた。19世紀にドイツのビスマルクが、マルクスらの共産主義に対抗して考え出したのが、所得税を累進課税として低所得者に所得の再配分する政策である。それが社会福祉政策であり、そのため西欧での共産主義革命を防ぐことができた。わが国でも終戦後の復興を経て、昭和30年代以降、所得税の累進課税による再配分を中心とする社会福祉政策が成功した。しかし、20世紀の後半になると、資本主義の高度化やグローバル化などによるタックスヘイブン(税金避難地)現象により、企業からの国への直接税による収入が著しく減収するようになる。その頃、わが国では占領時代に米国のシャープ勧告によって実施された直接税中心の税制度に問題が発生する。それはサラリーマンなど直接税を徴税される階層と、事業収入に課税される人たち等との不公正さが目立つようになったからだ。俗に「十五三」とか、「十五三一」(とうごうさんぴん)といわれ、10割を捕捉されるサラリーマン、5割捕捉の自営業者、3割捕捉の農業従事者に、最後のピンには政治家が列して、不公平税制の代名詞でもあった。

 西欧では積極的に消費税を整備し、社会保障の財源を確保するとともに、税の不公正さを是正した。わが国では、1970年代から消費税導入について本格的な論議が始まる。さまざまな困難を経て、昭和62年(1979)に中曽根首相が政治生命をかけた『売上税』を廃案とし、昭和63年(1988)竹下首相によって『消費税』が導入された。

 今回刊行する『消費税国会の攻防』は、昭和62年1月から同63年12月までの2年間、私が関わった出来事を日記に記録しておいたものだ。それを赤坂氏と奈良岡氏という憲法学と政治学の専門学者が「消費税制度成立の舞台裏と〝平野貞夫日記〟」として解題をつけてくれた。この中で「本書成立の経緯」などが書かれている。しかし、本書の問題点や評価などは、新進気鋭の2人の論に委ねたい。

 昭和63年12月24日(土)、午後5時59分、参議院本会議は「消費税法案等」を可決成立した。年が明けて、1月7日昭和天皇は崩御され、元号は「平成」となる。2月24日には「大喪の礼」が終わり、竹下内閣は長期政権かと誰もが思ったが、その後のリクルート事件の展開で、4月25日、竹下首相は辞意を表明した。中曽根前首相との権力闘争に敗北したのだ。竹下首相にとっては悶悶の日が続くなか、平成2年秋から小沢自民党幹事長発案で、「竹下登監修」と銘打って『消費税制度の沿革』の執筆を、私が始めた。平成五年五月には「ぎょうせい」から刊行した。その時、竹下元首相と私の2人で「消費税の将来」についていろいろ話した。この話の中に消費税の基本問題がある。

 「25年ぐらいすれば、消費税は税制の中核となろう。税収入の半分以上となる時、余程の注意がいることになる」と竹下元首相が語り始めた。私の記憶によれば3点あった。

     消費税制度は苦労してつくった。税制の中核となるには「国民の信頼」が絶対に必要だ。そのためには、売上税の時のように国民に嘘をつくようなことがあってはいけない。国民に誠実な説明をして国政選挙で理解して貰ってからでないと信頼を得られない。消費税制が信頼性を失うと国家財政は破綻する。

     消費税の導入について、僕が「六つの懸念」をいったとき、第一番が逆進性のことで、所得再配分機能を弱めることだった。スタートは生活必需品も含めて3%の一律となったが、これをそのまま10%にすればどんな混乱が起きるか、これから抜本的な政治改革が必要だ。

     一律税率のため、税率の引き上げが安易にできる。財政赤字を補うため消費税率を上げる「癖」をつけると大変なことになるわなぁ・・・・。

 というものだった。

 この時期、小沢一郎氏は『日本改造計画』(講談社)を刊行する。戦後政治家で総合的国家体制改革論を国民に提示したのは初めてであった。超ベストセラーとなり、英語版も出版された。この中に政治改革、行財政改革を前提に大胆な税制改革の提案があった。「所得税・住民税を半分とし、消費税を福祉目的として10%とする」というものであった。自分の判断で使える可処分所得を増やし、生活必需品などは消費税の対象外とする構想であった。

 私に言わせれば、『日本改造計画』は消費税を中軸税制にするための国家改造論であった。しかし、小沢氏の国家改造論は成功するかに見えたが、既得権という特権を死守しようとする勢力によって実現されていないし、それどころか、危ういところで「罪人」の汚名を着せられる寸前だった。

 民主党への政権交代で「国民の生活が第一」の政治が行われるかと国民は期待したが、菅政権とそれに続く野田政権は、ことごとく裏切っている。その代表例が、何の抜本的改革もなく、生活必需品も含めて消費税率を10%に上げることを強行しようとしている。

 

(消費税の21世紀における意義)


 野田首相はじめ与野党にわたる消費税増税論者は、「社会保障と一体的改革」といえば国民は増税を理解してくれると思っているようだが、とんでもないことだ。社会保障の整備が大事であることはその通りである。しかし、21世紀の現代、消費税では社会保障に対応できない時代になっていることを知るべきだ。竹下内閣で消費税を導入して、四半世紀が過ぎた。この25年の人類の歴史の変化を冷静に考えてみるべきである。率直に言って、資本主義が変質、否、崩壊したのだ。

 先進国ではいずれも経済や財政の破綻が危惧されている。大胆な国家改造なくして国家の存立も危うい。消費税制度をどうするかという問題は、社会保障という「部分」ではなく、国家全体のあり方として、国民的合意が必要なのだ。20世紀の諸制度を継ぎ接ぎする陳腐な政治的思想では、消費税への国民の信頼は生まれない。

追記
 ☆本号は無限拡散希望につき、転載許諾を必要としませんので、お取り扱いをよろしくお願い申し上げます。

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