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「日本一新運動」の原点―132

                                  日本一新の会・代表 平野貞夫妙観

 ○ 議会政治を考える!(続)

 10月17日(水)、最高裁は平成22年7月の参議院選挙は「違憲状態」という趣旨の厳しい判決を行った。これまでの国政選挙で「違憲状態」という判決の先例があるが、今回はことの外問題がある。

 私が注目するのは今回の判決で15人の裁判官のうち3人が「選挙は無効」という厳しい意見を出したことだ。前回号に続いて理屈っぽくなって恐縮だが、議会政治が成り立つ根拠は議員を選出する選挙であり、それを運用する制度が如何に大事なものかを中心に、問題を提起しておきたい。


(「違憲状態」の国会での決定は違憲だ!)

 最高裁の参議院選挙「違憲状態」判決について、国会側の反応が問題を深刻に考えていないことに驚くばかりだ。この判決が直ちに衆議院の選挙制度改正に大きな影響を及ぼすことを甘く考えているからだろう。衆議院の選挙制度については、既に平成21年の総選挙が「違憲状態」であると最高裁判決が行われている。これで国会は両院とも「違憲状態」という憲法上の正当性のない、異常で前代未聞の状態となった。

 先の通常国会で、衆議院の「違憲状態」を解消するため、民主党は「小選挙区5減、比例区40減(一部連用制)」の法案を提出した。自民党は「小選挙区5減」の法案を提案したが、いずれも審査未了廃案となり「違憲状態」は解消されていない。参議院では民主党が「地方区4増4減」の法案を提案したが成立に至っていない。参議院選挙は来年7月頃という定期的なもので、「違憲状態」の解消には若干の時間があるのでここでは論じない。

 問題は、9月のはじめ「近いうちに解散」と、自民と公明に約束した野田首相が、何時、衆議院を解散するかだ。これが、今日の最大の政治問題である。10月19日(金)に開かれた「民自公党首会談」で安倍自民党総裁と山口公明党代表が、野田首相に年内解散を迫ったが、会談は決裂した。翌20日の新聞各紙・テレビは、「これで年内解散はなくなった」と報じている。そこで最高裁の「違憲状態」判決のままで、衆議院解散・総選挙を憲法政治論上どう考えるか整理しておきたい。

 まず第一に釘をさしておきたいのは、①臨時国会の召集、②懸案問題の審議、③衆議院の解散などについて、民主・自民・公明の3党だけで党首会談を行うことを日本全体が何故容認するのか理由がわからない。いうまでもなく、国会は民自公の3党だけで構成されているのではない。衆参の両院で他の政党に所属する国会議員は無所属を含め、142名にのぼる。この、142名も選挙を経て国民から選ばれた国会議員なのだ。なのに、民自公だけで国会を動かそうと図る3党首会談に何の文句も言わないのはどうしたことか。かつては小政党といえども異議を唱え、政権与党も無視することはなかった。加えてメディアも政治学者・有識者も批判しない。この国はどうなっているのか。談合政治はやめるべきだ。

 さて、「違憲状態」での衆議院解散・総選挙は絶対に許されないのか、私は憲政の常道として許されるべきではないと考える。理由は議会政治の基本である「選挙に正当性」がないからだ。衆議院の構成に正当性がなければ、そこで決定される事項に正当性がなくなるからである。国会がつくる政権も違憲となる。問題は憲法69条による「内閣不信任案の可決、内閣信任案の否決」の場合の解散権の行使には議論があると思うが、私は肯定意見である。しかし、いわゆる憲法7条による慣行としての内閣の恣意的な判断による解散権行使は許されないと思う。以上は憲法論上の問題だ。

 さて、政治論としての問題だが、「違憲状態」で仮に解散・総選挙が強行された場合どうなるかということだ。結局は最高裁がどう判断するかによるだろう。事実行為を容認するか、総選挙全部を無効とするか、違憲状況の部分を無効とするか、さまざまなこと想定される。これに関連して奇妙な話が聞こえてくる。井上公明党幹事長がNHKテレビで話していたが、「臨時国会で〝5減案〟を成立させると、区画変更や周知期間に3~4ヶ月を要する。それでは早期解散で年内選挙は不可能ということになるので、違憲状態を解消する法律を制定しておけば、最高裁は国会の努力を評価して総選挙を無効とすることはない」という趣旨だ。

 弁護士の三百代言の理論であるが、これで違憲状態の総選挙を正当化できるだろうか。自民党もこの理屈で早期解散を迫っている。民主党の前原国務大臣もこれに同調している。議会民主政治の立場からいえば、この理屈がもっとも問題で悪質である。それは、最高裁の判決を政治が冒涜するという、三権分立の基本を犯すことになるからだ。

 「違憲状態」を解消する法律が任期内に施行できる状況で、あえて、違憲の法律で解散・総選挙となると司法権は不用になる。先述したとおり、憲法69条による解散ならまだしも、このやり方がもっとも憲法の原理や議会民主政治の原理を踏みにじるものであるといえる。これで政治をやれると考えている政治家は政治に関わる資格はない。議会の役割を理解できない政治家は直ちに辞めるべきだ。

 話を原点に戻そう。選挙制度が各党の個利・個略に乱用されるなら、民主党は直近の総選挙で公約した抜本改革をこの際断行したらどうか。少しでも信頼を回復したいと望むなら、マニフェストの「衆議院比例区80名削減」を実現してはどうか。その上で、「消費税増税廃止をし、国民のための税負担を再検討する」と、野田首相が高らかに声明すれば、少しは民主党への信頼も回復すると思う。

 先般のIMFの東京会議の様子からして、世界は財政再建ではなく経済再生に舵を切った。それでもデフレは収まらない。関係者には、経済成長が下向し消費税増税は不可能との見方がある。


(「小沢問題」は議会民主政治の破壊だ!)

 国会が正当かつ正常に活動するためには、選挙が正当に行われること、そして選ばれた国会議員が正当かつ正常に活動できることが保障されていなければならない。現在の日本の国会では、これが護られていないという致命的欠陥がある。11月12日には、小沢さんの陸山会事件の東京高裁控訴審判決で、そのことが明らかになると思う。

 陸山会事件とは、民主党への政権交代を阻止するため、犯罪事実のない小沢民主党代表(当時)を標的に、麻生政権と検察が権力を乱用して強制捜査したが不起訴になったものだ。それにもかかわらず、こともあろうに政権交代の立役者である小沢さんを、民主党の菅政権は犯罪者扱いとし、政治活動を封じ込めるために、憲法上疑義のある「検察審査会」の強制起訴で裁判に持ち込んだのだ。こんなに議会民主政治を冒涜・破壊したことは日本の歴史になかったことだ。自民党も民主党も、このような政治を平気な顔をして行う指導者がいる限り日本の再生はない。

 先進国では、こういう権力の乱用を防ぐため、政治資金や選挙活動については第三者機関を設けて、問題があればそこで調査し、犯罪性があればそこが検察に告発するようにしている。検察が政治資金や選挙活動に手を出し、政治家の活動に干渉するようなことを出来なくしている。わが国でも、国税庁や公正取引委員会が活動する方法を、政治資金・選挙活動でも行う機関を設けて、真のデモクラシーを確立しなければならない。
 わが国の議会民主政治確立には、国会運営の改革など大事な問題が山積しているが、選挙制度と議員活動の保障の二つが基本中の基本である。

追記
 ☆本号は無限拡散希望につき、転載許諾を必要としませんので、お取り扱いをよろしくお願い申し上げます。

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 平野代表は従来から「議会の崩壊」を唱えて警鐘を鳴らしてきましたが、ここに来て、複数の政治学者やテレビコメンテーターからも同様の意見が出るようになりました。しかし、平野代表ほど議会について語れる人材は他になく、政治学者でさえも誤った議会の在り方を語ります。

 昭和63年に上梓された「議会政治100年」―生命をかけた政治家達(徳間書店刊・絶版)のゴーストライターは平野代表ですが、これほどの議会通史が書ける政治学者はいません。そのダイジェスト版が「議会政治の誕生と国会」(平野貞夫著・信山社刊)です。

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