「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―155

日本一新の会・代表 平野貞夫妙観

 

 ◯ 憲法問題について(その3)

 桜の開花は4月の入学式がふさわしいが、今年は3月中旬の卒業式に咲くという異常気象だ。そのせいなのか、国会の周辺では主要な政党で、憲法改正について、第96条の改正規定だけを対象とする話が盛り上がっている。現憲法の生みの親である金森徳次郎博士は、『憲法遺言』で「憲法は国民の動き方を秩序あらしむる根拠の法則である」と、憲法を国民の文化としてとらえている。特定の政治目的で、第96条だけを改正しようとの考えは自重すべきだ。
前号に続き、自由党の「新しい憲法を創る基本方針」の要点を紹介する。


(8)地方自治について
  新世紀こそ地方の時代である。地方自治体が中央政府に従属する関係から、対等となる関係に改めるために、憲法に地方自治の意義と中央政府と地方自治体の役割を明確にする。
 地方自治体に対する規制の撤廃、税財源の確保、NPOとの連携など、自治体が独自の活動ができる根拠法を設ける。また、自治体の行政基盤の強化や財源の確保、効率的行政を推進するため、文化的・経済的・地理的に共通な地域コミュニティを合併統合で形成する。それにより中央政府と対等な関係に立てる根拠法を設ける。

(コメント)現憲法には地方自治体の意義や役割についての規定がなく、原則として中央政府に従属することを前提としている。健全な民主政治と豊かな国民生活の実現と、日本人の文化の継承は地方自治の確立によって可能である。地域コミュニティを当時は300と想定していた。

(9)財政について
  日本の財政は破綻状況であり、無定見な財政・経済運営が原因である。また、予算の単年度制度による消化ノルマの弊害も原因の一つであり改革する。公正にして簡素な新しい税体系を構築する。
 宗教団体及び慈善・教育等に対する公金の支出等の禁止規定を廃止して、必要な措置は法律事項とする。
 会計検査院を国会の機関とし、公正を確保し責任の明確化により、国民の立場による検査を確保する。

(コメント)財政悪化の原因は、口利き丸投げ談合政治にある。また、単年度予算による公的機関の巨額な浪費が政治家と官僚の腐敗の原因であり、新しい予算・決算制度を創設する必要がある。さらに、特殊法人制度が日本のあらゆる部門の自立を妨げている。税制度は国民の健全な納税意識を確立し、簡素でわかりやすい制度とする。

 

(10)教育及び文化について
  人づくり国づくりの基本は教育にある。憲法に「教育及び文化」の章を設けて、教育の基本理念と教育・文化行政のあり方を明記する。教育の目標は祖国と世界の平和と繁栄に寄与する知識と志と活力を持つ青少年の育成である。
 特に重要なのは義務教育である。基礎学力を重視するとともに、日本の伝統的な資質を育み、次の時代を担い得る「よき日本人」を育てる責任をもっている。そのために、官僚支配の教育行政を改革し柔軟で民主的運営を図るため、地域に「教育オンブズマン制度」を設ける。また、教師が崇高な職務であることに鑑み、地位と名誉等の保証を国が行うなど、必要な制度を整備する根拠規定を設ける。
(コメント)カントは「人間は教育されなければならない唯一の動物であるが、同時に教育すれば何でも習得できる動物でもある」と論じている(『教育論』)。人間には何故教育が必要か、よく考えるべきだ。地球最大の資源は人として教育された文化を持つ人間だ。欲望を剥き出しにし、人の道を理解しない人間は高学歴であっても人とはいえない。教育そのものを市場経済原理の対象にしようという構造改革論は間違っている。「学問は、有限の人間が無限の真理を究める手段である」という、伊藤仁斎の言葉に政治は耳を傾けるべきだ。自由党の基本方針は、国は義務教育の全ての経費を負担し、同時に教育行政は地域の「教育オンブズマン」に任せるべきというものであった。

 (11)環境・社会保障について
① 環境問題について
  環境問題は、「人類存続の基盤である地球環境の保全に全力を尽くさなければならない」と位置づける。国民の環境権の確保という立場からではなく、保全の義務として憲法に規定を設ける。環境破壊は、人間が生きること自体から発生して、資本主義のあり方と直結する問題である。
 自然といかに共生していくかが、これからの人類の課題であり、自立した国家として人類・地球の問題を自分自身の問題として考え、地球の一員としての義務としてその解決に積極的に参加、貢献する。
(コメント)自由党を結党した際、綱領に「人類存続の基盤である地球環境の保全に全力を尽くさなければならない」ことを宣言している。この基本理念を憲法に生かさなければならない。地球環境の保全は国家を始め国民、自治体、企業等の義務であることを憲法に明記すべきである。21世紀の資本主義は、地球環境の保全の下に営まれる「足るを知る資本主義」であるべきだ。自分だけ繁栄すればよいというマネーゲーム資本主義は人類を破滅させ、資本主義を衰退させることを認識すべきだ。

 ② 社会保障について
  自立した個人が多様な選択肢と公正なルールの下で、自らの生き方を創造的かつ自由に追求できる創造的自由主義社会を創るためには、新しい地域共同体、税制、雇用システムなどを確立することが必要である。さらに、国民の命や生活の維持、発展に必要な仕組み、即ち、基礎的社会保障(基礎的年金・介護・高齢者医療)を国の責任で整備することを憲法に明記し、誰もが生き甲斐をもって安心して暮らせる社会をつくる。

(コメント)21世紀の社会福祉は、資本主義の競争による社会的弱者を救済するという消極的な発想によるものであった。この発想を超えて、健全な資本主義社会を展開させる必要前提条件であると認識すべきである。そのために必要な経費は「消費税」をあてることを検討すべきである。保険制度に馴染まない基礎年金、介護、高齢者医療について、国民から保険料を徴収しない制度の構築を検討しなければならない。

 (12)改正手続きについて
  現行の改正規定は、制定過程の特殊事情により、異常な改正手続きとなっている。「各議院の3分の2以上の賛成」という発議要件を「過半数」の要件に改める。国民投票による承認制度は存続させる。
(コメント)憲法第96条は、国民の承認により憲法を改正することができるとして、憲法制定権が国民にあることを規定している。改正の発議が衆参両院の3分の2以上の賛成という要件で、「硬憲法」といわれている。21世紀になって、あらゆる事態が激変・激動するなかで、事態に対応するため発議要件を「過半数」とすることが適切である。

 冒頭で論じたように、この改正手続きだけを抜き出して憲法改正を行う主張は、特定の政治目的を持つもので健全な憲法論ではない。なお、憲法改正国民投票と国会法改正は、平成19年に整備された。私の引退後であったが、問題が多く見直しが必要である。

  以上が、平成12年12月に『自由党』(党首・小沢一郎)が策定した「日本一新 新しい憲法を創る基本方針」の要点と、当時の状況を踏まえて現時点での私のコメントである。この間に13年の時間の流れがあった。まさに激動の時代が続いているが、この「基本方針」も多くの点で再検討が必要である。

 昨年4月、自民党は「日本国憲法改正草案」を発表した。この草案は、ひと言でいうなら「立憲主義の否定」である。国家権力のあり方を規制的に調整する憲法の機能を無視したもので、過去の自民党構想と比べてもっとも劣化したものである。

 自由党の「基本方針」は憲法文化論であり、すべてを憲法に規定するものではない。なお、立法権・司法権・社会保障等について抜本的見直しを要する。基本方針の思想と理念は発展させて継承すべきと思い、敢えてメルマガで採り上げた。

 いま、「憲法を拙速に改正すべきでない」というのが私の意見である。世界において資本主義が崩壊的に変質し、北東アジアで異常な緊張が発生、わが国では大震災と原発事故の混乱が続いている。これらを踏まえて、21世紀の憲法文化を熟慮する時期ではなかろうか。

☆本号は無償公開につき、転載自由です。

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