「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―188

                               日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観


(「違憲審査権」を放棄した最高裁!)

 11月20日、最高裁は昨年12月16日に行われた第46回衆議院選挙を「違憲状態」と判決した。何故「違憲」と言わないのか。その理由は「昨年の衆議院選挙の区割りは『違憲状態』だったものの、国会が合理的期間内に是正しなかったとはいえない」とのこと。本来の任期満了(今年8月)より前の今年6月には、新たな区割りができていたことなどを一定の前進と評価した判決であった。
 こんな屁理屈で憲法が護れると思っているのか。「違憲状態」だが「合憲」という屁理屈を庶民レベルに落とし込めば、「あなたは泥棒だが、この際、罪には問いません」と同意語である。「違憲状態」を「合憲」とした判例をつくった責任は重大である。

「歌を忘れたカナリア」となった最高裁、いよいよわが国の危機はとりかえしがつかないところまできた。後は「違憲状態の国会議員」に、これ以上の違憲立法や行為をさせないことだ。


〇 憲法夜話 10)特定秘密保護法案と治安維持法

(「特定秘密保護法案」は廃案にすべきだ!)


 断っておくが、国家が特定の機密を一定期間秘密として保持することに、私は反対するものではない。しかし、憲法の国民主権の根幹は「国家が持つ情報は、国民のものである」という哲学・思想がその前提にある。その考えの元で秘密の保持といえる。

 新たに秘密保護を法制化するなら、少なくとも次のような思想を国会議員が共有すべきである。
 1)議会政治の歴史は、国家権力(官僚)が隠す情報を如何に国民のために開示するか
   にあったこと。
 2)デモクラシーの進歩とは、公権力が持つ情報を公開することによって担保されること。
 3)時代の変化による「秘密保護」の必要性がある場合には、現行制度のどこに問題が
   あるのか、さらに過去の制度の問題点を十分に検証すること、などである。

 これらは議会民主政治を標榜する国家なら常識である。しかし今日、日本国で展開されている仮面議会政治は、こんな常識が通じない。憲法政治以前の狂気の政治であることを、強く指摘しておきたい。それは、現在の衆議院議員が昨年暮れの総選挙で選ばれたとはいうものの、憲法上、真の正当性はない。11月20日の最高裁判決で「違憲状態」と判示されたことは重大である。

 判決の少数意見にもあるように、本来なら「選挙無効」の判決であるべきだ。私から見れば「欠陥議員」によって衆議院が構成されていると断じるべきだと思っている。

 現在、国会で審議中の「特定秘密保護法案」は、常識以前、憲法政治以前の問題を抱え、自民・公明の与党のみならず、のめのめと修正協議を合意した「日本維新の会」と「みんなの党」の対応は、もはや議会主義政党とはいえない。狂気の沙汰というべきだ。
 否、このような政治的幼児を選び出した国民にも大きな責任がある。

 この愚かなできごとの大本は、民主党政権であったことを考えると、日本の大・中政党はもはや日本国のデモクラシーを崩壊させるために存在しているとしか思えない。野党らしいのは、共産党・生活の党・社民党であるが、これらも議会政治の形式論の域を出ない。秘密保護法案の審議を見ても、本質を鋭く突く論議はまったく見えない。

 この法案は、知る権利など基本的人権・国民主権に抵触する問題点が星の数ほどあるが、一点だけ指摘しておく。第10条の、「その他公益上の必要による特定秘密の提供」の規定だ。国会の活動を規制し「特定秘密」の取扱いについて、立法府を行政機関の下位にする問題がある。また、司法府に対しても、刑訴法及び民事法において「行政機関の判断を優位とし、事実上正当な裁判を不可能とする問題がある。立法・行政・司法権の憲法原理に真っ向から反するものだ。

 違憲議員による違憲立法を許してはならない。即刻廃案とすべきである。


(治安維持法制定の歴史的背景)

 衆議院の審議ではほとんど論議されていないが、有識者の中で話題となっているのが大正14年(1925)に制定された「治安維持法」との関係である。この法律の狙いは「共産主義運動等の取締り」であった。第一次世界大戦後の世界の混乱や、ロシア革命の影響はわが国にも浸透してきた。労働者のストライキ、米騒動などが起きるとともに、共産主義運動が増大するという時代背景があった。この法律は突然に制定されたのではない。

 大正11年に「過激社会運動取締法案」が貴族院に提出され、修正議決して衆議院に送付されたものの、世論の厳しい批判を受け廃案となった。ところが、翌大正12年9月に関東大震災が発生する。「非常徴発令」とともに「治安維持の為にする罰則に関する件」が、緊急勅令として発令された。これらは天皇からの勅令であり、法律と同じ効果を持つものであった。

 さらに、大正13年に共産党が非合法化で結成され、暴力革命を運動方針とした。このような時代背景の中で大正13年、護憲3派(憲政会・政友会・革新倶楽部)による「加藤高明内閣」が成立し、「普通選挙法」の制定を国民に公約することになる。普通選挙法とは、明治以来、民権派にとって帝国議会改革の最大の課題であった。これが実現できることは、わが国が議会政治国家として、国際的にも評価される絶好の機会であった。第50回議会の大正14年2月20日、「普通選挙法案」が衆議院に提出される。

 この普通選挙法案を先導するように、2月18日に「治安維持法案」が衆議院に提出された。要するに護憲3派内閣は、普通選挙法案の貴族院での否決を避けるため、治安維持法案との取引を、貴族院藩閥官僚と行ったのである。治安維持法は、3月19日に貴族院で可決成立した。普通選挙法は、追っかけるように3月29日、貴族院で可決され成立した。

 普通選挙法は中選挙区、選挙権は満25歳以上の男子に限られ、婦人の選挙権は認められなかった。婦人参政権は昭和20年の敗戦後、占領という体制で導入した。

 この貴族院との取引をどう考えるべきであろうか。この取引がなければ、普通選挙制度の導入は遅れ、敗戦後になった可能性がある。また、非合法化の共産党が暴力革命を運動方針とする時代背景を考えると、悪法ではあるが政治の現実として、歴史の厳しさにも思いを致さねばならない。


(「特定秘密保護法案」は「治安維持法」よりタチが悪い!)

「治安維持法」は、国体(天皇制)を変革し、または私有財産制を否認することを目的とする行為を処罰することが目的であった。その対象は、1)目的のための結社の組織・加入。2)目的実行の協議・煽動。3)騒擾・暴行・生命身体・財産に害を加えるための犯罪の煽動等々であった。悪法であることは間違いないが、それでも処罰する対象に問題があっても、構成要件など法律の形になっていた。その改悪がさらなる悲劇を起こした。

 ところが「特定秘密保護法案」は、これが法律案かと強い疑念を持たざるを得ない。よく内閣法制局が了承したものだと驚いている。内閣の行動について憲法上のチェックをするのが役目の筈だ。内閣法制局長官が交代してから狂ってきたのかもしれない。

 法案の趣旨は「安全保障」という曖昧な概念のもと、行政機関が「特定秘密」とすれば、それを漏洩する者を処罰するというものだ。21世紀の高度情報化社会で、人間が政治・社会・文化など活動することは、すべて公共に関わる情報を、いかに活用するかということである。「知る権利」とは、公的機関が公平に活動しているかどうかを、国民・市民が正確に知る権利のことなのだ。

 大正末期の治安維持法時代は、「国体等」を護るためどのような行為をすれば、こう処罰するという用件を明示していた。それが、特定秘密保護法案では、情報を秘匿することで知る権利を封じ、政治・社会・文化などの活動を、包括的に網をかけるように妨げることが可能になる。治安維持法より悪質で、市民社会を冒涜するのが特定秘密保護法案だ。

 特定の政治権力が情報を独占的に支配することを可能にする法案である。「情報ファシズム国家」をつくることに、みんなの党・日本維新の会、そして、ある意味では民主党までもが協力していく流れ担っている。恐ろしいことだ。

 確かに安全保障は大事だ。わけてもテロ対策は重要である。無差別に行う過激派テロにはしっかりした対応が必要だ。しかし、それは民主主義を阻害するものであってはならない。テロリズムを拡大再生産させるだけだ。テロを育成する根本の対策が必要だ。過激なマネーゲームの金権亡者はテロリストと同じだ。マネーゲームに通じる政策を反省する方が、特定秘密保護法の制定より有効なテロ対策である。
                                                   (了)

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