「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

◎「日本一新運動」の原点―198

日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

 

〇 東京都知事選の思い出 =遅かりし由良の助=

 

 1月23日(木)に東京都知事選挙が告示となった。前号のメルマガに「細川元首相の『佐川急便問題』の真実」を掲載したが、想定を超えてネットで拡大したことに加え、プリントされて巷間にも拡がったらしく、産経新聞などの意図的な捏造記事の効果が薄められたようだ。

 それだけでもないのだろうが、〝その筋〟が目をつけているので用心するようにと、注意してくれる人がいる。この寒さのなか、この歳での留置場暮らしはゴメン被りたいので、思い出話くらいなら問題は無かろう。それにしても、この程度のことで嫌な時代になったものだ。

 

 さて、今から4半世紀前の話だが、平成3年4月に行われた、東京都知事選挙は、自民党本部が公明・民社と一緒に磯村尚徳NHKニュースキャスターを推し、自民党東京都連が鈴木俊一前知事を推して、自民党は分裂選挙となった。今回と少し似ているのは偶然だろうか。

 結果は、自民党本部即ち小沢幹事長が推した磯村候補が敗れ、小沢幹事長は責任をとって幹事長を辞任した。歴史に「タラ・レバ」は禁物だが、この時、磯村候補が勝つとか、小沢幹事長が辞めなかった場合、政治は大きく変わったと思う。というよりも、この東京都知事選挙には「湾岸戦争」という重大な国際情勢がその背後にあったこと、そして候補者の選定過程で未発表の秘話がある。今それを明かそう。

 

 当時、私は衆議院事務局で委員部長という役職に就いていた。小沢幹事長が時々相談事を持ち込んできた。自民党執行部の政治家に能力のある人物が少なかったからだ。平成2年の夏だった。

小沢幹事長と同席した会合で、翌年4月の都知事選挙が話題となり「鈴木さんが元気そうだし、もう1期やってもらおう」ということで、小沢幹事長の気持ちは固まっていた。

 ところが、秋になって自民党都連の粕谷茂衆議院議員が、高齢や東京湾開発問題で鈴木知事の再選に反対した。それは形の上の話で、その真意は小沢幹事長への反発である。政治改革を主張し、湾岸紛争問題などで指導性を発揮することが要因で、「若いのに小沢は生意気」という嫉妬であった。平成3年となり、湾岸紛争が戦争となる1月、自民党は都知事候補をどうするかの問題を抱えることになる。

 

 1月20日過ぎ、小沢幹事長から「湾岸戦争にあたる国連多国籍軍用の90億ドル拠出法案は、どうしても成立させなくてはならない。自分は都知事選挙の候補者選びに時間をとられるので、90億ドル拠出法案の方を公明党が納得する理論づくりをやって欲しい」と頼まれた。当時は参議院が与野党でねじれていて、どうしても公明党の賛成が必要であった。

 

 90億ドル拠出法案については、「護憲開国論」という小論文を私が執筆し、憲法前文の国際社会への協力により、わが国の安全と生存が保障されるとの基本理念をもって、憲法九条を読み替えた場合、違憲ではなく積極的に協力すべきだとの論旨であった。創価学会が賛同してくれて公明党と民社党の賛成で成立していくことになる。

 一方、都知事選挙の候補者選びは難航する。創価学会が「磯村氏でどうか」と持ちかけてきたが、自民党も民社党も簡単には固まらない。2月に入って間もなく、小沢幹事長に国会内の幹事長会議室に呼ばれた。

「都知事候補の磯村をどう思うか?」

「国会運営のことなら話にのるが都知事選挙には関わりたくない」

「好きか、嫌いかぐらいは言ってくれ」

「だめだ。巻き込まれたくない!」

と押し問答をしているところに、選挙担当の中西啓介副幹事長が顔を見せ、

「幹事長、総務会が始まる時間ですよ!」

「今日はたいした案件がないから出ない。それより、都知事候補が大事だ。この男、磯村について意見をいってくれないんだ」

「平野さん、感想ぐらいは言ってやれよ」

 私も仕方なく、テレビで磯村氏が銭湯に入っている映像が記憶に残っていたので、「銭湯の仕草を見ていると、H・Mっ気?があるんじゃないですか!」

 すると、中西啓介副幹事長曰く、

「平野さんは勘が良い。実はそんな噂があるんだ」

 すると、小沢幹事長、大声で、

「それは重大な問題だ。どうして早く言わなかったんだ」と怒り出した。そして、「今夜、民社党が磯村について返事を持ってくることになっている。断る可能性もあるので、持ち駒として磯村氏以外に誰か切り札を探して欲しい。今日の午後6時までに・・・・・・・」

 結局、都知事選挙に巻き込まれた。人が好いというか馬鹿というか、状況が理解できるから、懇請されると後に引けなくなる。その日、1日中、必至になって考えに考え、知人の意見も聴いて可能性のある人物として、元東京大学学長の加藤一郎氏が的確と確信した。

 その日、約束の午後6時にホテルニューオータニで小沢幹事長と会って、加藤一郎氏を推したところ、

「そうだ!、その人物がいた。しかし遅かりし由良の助だった。彼だったらうまくまとまったのに残念だ。実は磯村氏について、先ほど民社党から了承するとの返事があったんだよ」

 自民党本部は激論の末磯村氏を推薦することを決めたが、東京都連は納得せず鈴木俊一前知事を推薦して、分裂選挙となった。

 

〇 東京都知事選挙・タラレバ物語!

 

 もし、平成3年の都知事選挙で私が探し、本人の感触もよかった加藤一郎氏が立候補したならば、鈴木前知事は喜んで立候補を辞退したと思う。加藤氏は当選、小沢幹事長は辞めずに済み、そして病気にもならずに海部政権を支えることになる。となると、小沢幹事長が一番にやろうとした「自民党改革」も実現し、冷戦後の世界情勢に対応できる「政治・経済改革」も実現したであろう。

 要するに平成3年の都知事選が、自民党内で小沢氏に対する憎悪を発生させたといえる。90億ドル拠出法案を成立させるために、公明党=創価学会に政治的配慮をしたことが自民党守旧派に理解されず、小沢氏が自民党から弾き出される原因となる。その後の国政展開が、細川非自民八党派連立政権であり、村山自社さ政権であり、そして「自・自」→「自・自・公」→「自・公」→「民・社民・国」→「民・国」→「自・公」となる。

 

 その結果、現在の国政構成はリベラル保守を劣化させた安倍自民党と、「民衆の救済」という立党の理念を放棄した公明党による、事実上の独裁政治となった。その遠因は、平成3年の東京都知事選挙の候補者選びにあったというのが、私の妙見法力で透視した見解である。

 

 もうひとつ大事な客観的要因があることを指摘しておかねばならない。それはこれらの政治展開で、ほとんどの場合、右傾化する自民党勢力を、結果的に強化・後押したのは、日本共産党の現実政治を無視した空想的「唯我独尊(独善)主義」路線であった。歴史には〝パラドックス〟という結果がある。「数年経って日本の『戦前回帰』をつくったのは、実質的に日本共産党であったと言われないようにしてもらいたい」というのは、私と交流のある多くの共産党員の意見である。

 

 東京都知事選挙が国政をコントロールする要因になるのは平成3年だけではない。かつての美濃部都知事の出現、青島都知事の出現などをみれば理解できるだろう。東京都のGDPはメキシコ・韓国を上まわる。これ程の経済規模を持つ首都のトップを選ぶ、さまざまな要因が、国政に大きな影響を与えることは歴史的にも国際的にも知られている道理である。ましてや今回の都知事選挙が、どんな歴史的意味と影響を持つか、重大である。

 主要4候補を届出順に並べると、宇都宮・田母神・舛添・細川となる。公約や主張で因数分解すると「細川・宇都宮」対「舛添・田母神」となる。保守とか革新とか古典的フレームでは考えないが、選挙の構造をみると、宇都宮と田母神が、パートナーの票をどれだけ喰うかによって当選が決まるような気がする。要するに、より喰われない方が当選することになる。

 

 これを理論的にいうなら「戦前回帰になる方向で都政を行うか」対「原発資本主義を改め、新文明を創造する方向で都政を行うか」という構図になる。このことはとてつもない重大な問題である。国政問題を超えて世界の問題になる。私の言いたいことは、知事選の公約や争点が東京都の権限かどうかという三百代言の発想を超えたところに、今回の都知事選が位置づけられていることを有権者は自覚すべきだと思う。
 確かに、首都とは言え地方選挙にすぎないが、天命は東京都民に「原発文明と戦前回帰の政治を続けてよいのか」を問い掛けているのではないか。3・11という大災害と原発事故を起点とする首都の知事選挙であり、それがこれからの都民の福寿を左右するのだ。否、都民のみならず、日本国民の、さらには世界規模の市民福寿につながる可能性を持つ選挙であることを繰り返して述べ、本号の筆を置く。

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