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◎「日本一新運動」の原点―230

                                 日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

 安倍首相が主張する「積極的平和主義」とは、平和憲法を蹂躙する『集団的自衛権の行使』を正当化するための口実に過ぎない。
戦争を仕掛ける権力者が好んで使うことばである。「憲法の平和原理の積極的活用」という、本稿の連載で論じている『護憲開国論』とは、本質的に異なることを理解されたい。

○日本国憲法と「国連の集団安全保障」(7)

 平成2年11月9日の未明、自公民3党は「国際平和協力に関する合意覚書」(前号で紹介)という歴史的合意を行った。その日は第119回臨時国会の会期終了日で、厳しい睡魔と闘いながら会期終了の仕事を済ませた。
 各党の反応は、自民党内で防衛族に抵抗があった。山崎拓元防衛庁長官に呼びつけられ、経過と説明をさせられた。社会党は社公民路線の解消であり、党内は虚脱状態であった。公明党と民社党は大喜びで、市川・米沢書記長から鄭重な電話があった。共産党には自民党から説明に行き、強く抗議を受けたとのこと。
 この3党合意に基づいて、小沢幹事長構想をつくることになる。

 基本方針を、

1)憲法の範囲内で国連中心主義とし、軍事的表現は避けること。
2)武力行使は行わず、警察、警備的な機能を中心とすること。
3)身分は国際法上の軍人になろうが、社会党も了承するものを立案する。

 として、非公式なプロジェクトチームをつくり、外務省の加藤良三、宮川真喜雄、衆議院法制局の内田第一部長と私の4人で、新法の骨子づくりを行った。「国際連合海外警備協力法(仮称)骨子」をまとめ、小沢幹事長に届けた。この構想が平成3年の秋、海部内閣から「PKO協力法案」として国会に提出されることになる。内容で大きく変更したのは、「自衛隊と別組織」の部分が「自衛隊」で参加することである。
 小沢幹事長が平成3年4月の東京都知事選敗北の責任をとって辞任し、その後、病気などで要職から離れていたため、自民党の防衛族に押し切られたことによる。

(「ジョン万次郎の会」の設立と国際協力)

 11月29日、議会開設100年記念式典が行われた午後、憲政記念館ではかねてから準備していた「ジョン万次郎の会」の発会式が行われた。私の故郷の偉人・万次郎が十四歳で漂流し、米国の捕鯨船に救助され、米国で教育を受け、鎖国の日本に帰り近代技術や草の根デモクラシーを伝えたことはあまり知られていなかった。幕末に立派な国際人として生きた、万次郎の見識を啓蒙して、ポスト冷戦の日本人の手本にしようと漂流150年を記念して設立した会である。湾岸戦争で軋む日米関係に配慮したものでもあった。この会が平成4年に「ジョン万財団」となった。

 国連平和協力法案の審議の最中に準備したため、ゲストに土井社会党委員長を招くことを遠慮していた。発会式の前日、土井委員長から電話があり「平野さん、どうして私を呼ばないの。万次郎は私の母校・同志社と関係があることを知らないの!」と迫られて、急遽出席となった。
 会長に就任した小沢自民党幹事長は、「米国は世界のリーダーとして、日本はアジアの中心、そしてヨーロッパといった、この3つの世界が友情の絆で結ばれていれば平和は維持できる。
 しかし、最近日米関係について、ややもすると誤った観点から論評が出がちだ。日米両国の絆になればと思い、草の根の日米友好関係をつくっていく」と挨拶した。

 ゲストとして出席した土井社会党委員長は、母校である同志社の創始者・新島襄と万次郎の関わりに触れながら、「日米友好関係を健全に発展させるためには、与野党を超えて積極的に協力することが大切だ」と述べた。市川公明党書記長は「先の国会で、日本の平和主義が議論されたが、いろいろ意見があった。平和を守るためにどうするべきか、いま、まさに匕首を突きつけられている」と述べた。

 これらは4半世紀前の話である。米ソ冷戦終結後のわが国の政界は、新しい事態に対応する政治を求めて各党とも試行錯誤していた。米国もブッシュ大統領(父親)の時代で、各国と協力して国連を中心とする平和と繁栄を目指していた。日本国憲法が許さない「集団的自衛権の行使」を主張する政治家はわが国にはほとんどいなかった。

(90億ドル追加支援と「護憲開国論」)

 年が明け、平成3年1月17日、国連安全保障理事会の決議に基づいて、クェートに侵攻したイラク軍を多国籍軍が攻撃し、湾岸紛争は湾岸戦争となった。米国は多国籍軍の経費として90億ドルの追加支援を日本に要請してきた。前年に40億ドルの支援を行っているが、これは予備費から支出したものだ。90億ドルといえば予備費で賄える額ではない。補正予算と財源をつくる法的措置が必要となる。
 年明けに再開された第120回通常国会では、まず代表質問で「90億ドルの追加支援」が論争となった。社会党の土井委員長は「日本は憲法で戦争を放棄したのだから、他国の戦争にも手を貸してはならない」として反対した。公明党の石田委員長は「海部首相の姿勢を全面的に認めるわけにはいかない」と微妙な意見を表明した。この時期の参議院の与野党逆転は厳しく、仮に民社党が賛成しても過半数とならず、公明党が財源法案に賛成しなければ成立は不可能であった。

 公明党の説得には苦労を重ねた。創価学会の婦人部が土井社会党委員長の影響をうけ「戦争はどんな戦争でも悪い」とか「フセイン―ブッシュ同罪論」など、マスコミや共産党の意見に同調していた。この時期、小沢幹事長は東京都知事選候補者選びで多忙を極めていた。2月1日にようやく自民党本部と公明・民社で共同推薦の候補者が決まり、90億ドルの追加支援の公明党対策を本格化させた。
 この日の夜、ホテルオータニで小沢幹事長と会って議論をした。
 私は予てからの持論をぶつけた。「2020年頃には、国連に世界連邦政府のような機能をもたせ、国連警察軍といった国際秩序を保つような組織をつくらないと、世界は破滅します」と。
 小沢幹事長は「自分も憲法の平和原理を大事にしたい。平和原理のなかでどうやって国際貢献していくか・・・・、国連の警察軍なら本来自分の発想だ。その方向で公明と一致できれば、自民党を説得する」とのこと。そのため憲法の平和原理の下で、国連を中心とした平和確立のため「総合的安全保障論」をまとめることになった。
 小沢幹事長と私でまとめた構想が『護憲開国論―憲法の平和原理の積極活用―』であった。これを公明党の石田委員長・市川書記長・二見政審会長らが評価し、創価学会婦人部の説得に当たることになる。
 その要旨は『公明党・創価学会と日本』(講談社2005年版)に掲載してある。その結語部分を参考のために転載しておく。
 小沢一郎という政治家が、いかに日本・世界を考えていたかがわかる。

 世界の趨勢は、国連を中心とした世界連邦へと進んでおり、権威ある未来学者によれば、2020年頃にそれを実現できなければ、人類は破滅するとの見方がある。事態の展開は想定より速いかも知れない。
 現在、政治が取り組まなければならない最大の問題は、国連を中心とする国際安全保障体制を早急に整備することである。
 そのためには、まず、自衛隊のあり方をはじめ、防衛大綱、中期防衛計画を再検討し、新しい国際情勢に対応する日本の安全保障を再構築することが必要である。
 これと併せて、国際社会の平和と秩序の維持にあたっては、国連を中心とする国際警察機構を設立すべきである。
 憲法の平和原理を積極的に活用するという観点に立つならば、日本はこの構想を積極的に提言し、その実現にあたっては、人的にも資金的にも貢献しなければならない。
 なお、国際警察機構については、あくまでも将来、国連が世界連邦に発展し、国連軍が形成されるまでの措置である。日本が貢献するにあたっては、憲法の平和原理を実効あらしめるという目的に限定されることは論をまたない。
 今日の国際情勢下における日本人の意識が一国だけの繁栄、一国だけの平和ということから脱却できないとすれば、江戸時代の鎖国意識と何ら変わるところがない。
 護憲開国に目覚めるべきである。

 公明党はこの理論を活用して「国際平和の確保」のアピールを発表し、90億ドル拠出法案に賛成することになり3月6日成立した。湾岸戦争は2月28日に終わる。海部政権にとっては湾岸戦争の後始末、ペルシャ湾の機雷除去に海上自衛隊を派遣する問題などが課題となる。
                                                      (続く)
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