「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―266

            日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

 
〇安全保障法制関連法案を廃案にする〝死角〟がありますよ!

 

 5月14日(金)、安倍内閣は「平和安全法制整備法案」と、「国際平和支援法案」を閣議決定した。同日の夕刻に行った安倍首相の記者会見をテレビで見たが、これほどに言うことと、実際にやっていることが真逆の政治家は世界でも稀だ。「政治偽証の世界遺産」といえるものだ。

 

 閣議決定した「平和安全法制」の提出理由について「不戦の誓いを将来にわたって守り続けるため」と発言しているが、ならば、なぜ戦争のための制度である「集団的自衛権」を、憲法に違反してまで行使できるようにするのか。「極めて限定的」と称しているが、すべての戦争が、その発端は極めて限定的な武力行使から始まるという歴史を知らないようだ。「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない」とも発言していたが、私の信条は、「絶対」という言葉を使う政治家は信用できないというもので、この発言には、低機能の〝ウソ発見器〟でも反応するだろう。

 

 そしてまた「いずれの活動でも武力の行使は決して行わない」とも断言しているが、だとするならば、このような法律は無要であると安倍首相自身が語っているようなもの。
 若しかしたら〝分裂症〟か?。

 

 連立与党のパートナーである山口公明党代表の記者会見の冒頭発言も問題だ。「安倍首相は・・・・・憲法に基づく専守防衛の方針を堅持し、平和国家の道を歩むことを明確にした。・・・・日米同盟に隙間のない法制を整えることで抑止力が高まり、戦争を起こさせない効果が高まる」とは、正気の沙汰かと疑いたい。
 第2次大戦後の世界中の紛争や戦争の多くが、米国の国益(資本主義)のためでありその抑止力競争が原因であった。米国の暴走を日本が上手に調整し、日本では自民党の暴走を公明党が抑制してきたのが戦後政治であった。これらを忘れ、これからは日本の暴走を米国の良心的な有識者が抑制する事態となっている。安倍首相の「歴史修正主義」が、東アジアだけでなく、世界の緊張を高めている事実を、自民党も公明党もわかっていないようだ。

 

(廃案は野党の結束次第だ!)

 

 与党が圧倒的多数の国会でも、会期中に安全保障法制関係法案を形式的に廃案に追い込むことを野党は目標とすべきだ。それが困難な場合、政治論として、この国会で、衆議院での審査を終了させず継続審査にしてその後の政治日程を考えれば、自民党総裁選挙や来年の参議院選挙などに向け、憲法9条の平和理念が事実上形骸化される実態を国民に訴えることで廃案とすることは可能である。

 

 議会政治が正常に機能しておれば今回のような憲法や議会政治を冒涜した政治手法をマスメディアが批判し、国民に民主政治の危機を訴えればこんな違憲法案なんか提出できないはずだ。

 今では、わが国のマスメディアの実態は、その本来の目的である〝健全な議会民主政治を支える機能〟を完全に失っている。そのために多くの国民に憲法や議会民主政治の危機という認識が生まれない。もっと厳しくいえば、国民の代表者である国会議員でさえその認識が不足している。

 

 そもそも、議会民主政治を、多数決なら何でもできると勘違いしている日本人が多い。多数決を行使して国家の意思を決めるについて、前提・条件・限界があるのだ。例えば歴史観や価値観といった個人の固有権については多数決を使ってはならない。さらに、憲法の原理に反することを多数決で決めることは、議会政治を使った革命であり許されることではないが、このたびの安全法制整備関連法案は、それをやろうということだ。

 

 議会民主政治では、多数決の前提条件として、少数派に多くの権利を保障している。質疑権・調査権・討論権・表決権などである。これらは暴走する多数に対する抵抗権である。最近の野党は議会の本質的機能が抵抗権にあることを忘れている。否、知らないのかもしれない。

そこで、どのような抵抗権があるかということだが、衆議院事務局で33年間、与野党の暴走を調整することを仕事としてきた私の意見は、安倍政権が暴走すればするほど、それに対する抵抗が可能だと思っている。

 

 今回、野党が「安倍・読売・産経革命」に抵抗するためにどんな発想が必要か、これが肝要だ。野党の一部には安倍政権に同調する勢力もいるが、それを気にすることはない。次の総選挙で彼らの非を有権者が知ればよいことだ。野党の中で政治生命を懸けて日本の議会民主政治と憲法を護るという衆議院議員が、極言すれば現在議員数の5分の1あればよい。「5分の1」とは、憲法57条及び衆議院規則152条にいう本会議での記名投票要件だ。この勢力が会派を超えて、日本の民主主義を死守しようと結集し、一丸となって活動できる体制ができるか否かによる。

 

 このグループ活動が、他の会派の良識ある議員を動かし、また、国会の外にいる民衆の魂を目覚めさせることなる。国会で、安倍政権の暴走への抵抗が自己満足であってはならない。現在のマスメディアの状況では、まともな質問をしても正常な報道を期待することは不可能である。そこは正式な国会の機関でなくても国会関連施設でマスコミが採り上げざるを得ない学識経験者や、タレントなどを組織したシンポジウムや講演会などを計画して、何度も何度も啓蒙活動を野党が中心となり開くべきだ。

 

(「平和安全法制整備法案」の括り提出は、

国会の審議権を侵害した違憲手続きだ!)

 

「平和安全法制整備法案」は、その内容だけではなく提出手続きも違憲である。こんな悪質なやり方は議会民主政治の諸国ではあり得ないことだ。これに対する野党のリーダーたちの認識が甘い。

 岡田民主党代表は「無理に束ねると論点がより複雑になり国民から見てわからなくなる」と語った。江田維新の会代表(当時)は、「極めて手っ取り早く国会審議をすっ飛ばし、数の力の押し切ろうという意図がありありだ」と語っている(五月十五日朝日新聞朝刊)。

 東大法学部卒で旧通産省キャリアのご両人がこんな憲法感覚ではこれからのことが思いやられる。この安倍政権のやり方がなぜ不条理で理不尽か、憲法上の理由を国民に説明すべきだ。政府が国会に複数の法案を一括してひとつの法案として提出する例はたまにある。それにはルールがあり、国会の審議権を妨害しないことが絶対条件だ。

 

 その理由は、憲法上、国会が立法権を持っていることに根拠がある。そのための調査権・質疑権・討論権・表決権などは多数決で排除できない権限なのだ。10件の改正法案をひと括りにして1件の法案とした「平和安全法制整備法案」のどこが問題か例示しよう。

 この中の「武力攻撃事態法改正案」は、集団的自衛権の行使を可能にするもので憲法違反の内容だ。国会を解釈改憲に悪用することなので、審議の前に議院運営委員会に「憲法と集団的自衛権問題小委員会」などを設置して十分なチェックをすべきだ。過去の政府解釈や国連での運用解釈など内外の問題が山積しており海外などで十分な調査をする必要がある。歴代内閣法制局長官などを呼べばよい。これだけでも審議時間は最低1ヶ月を要しよう。

 

 また、「PKO協力法改正案」が含まれている。まったく性格の違う法案で1本化する合理的理由はない。この改正案に憲法上の問題はあるが真面目な議員の中には賛成、あるいは修正の意見を持つものもいるだろう。この議員たちの表決権は、一本化法案という政府の手続きによって侵害されることになる。こんなやり方は許されることではない。

 

 そこでどう対応すべきか。この安倍政権のやり方は国会を冒涜するものであり、両院議長の権威を失墜させることだ。本来なら、提出直後に野党の代表が、まず、提出先の衆議院議長に会い議長の考えを質すべきだ。提出された15日に与野党国対委員長会談は開かれ、10本ひと括り法案について「乱暴なことだ」(高木民主党国対委員長)との話が出たようだが、「撤回のうえ分割して再提出すべし」との要求と、国会の審議権の問題として議長を巻き込んで提起すべきである。

 

 この交渉が第一歩であるが、決裂した場合、野党は本会議に「撤回要求決議案」や「分割再提出要求決議案」を提出し、堂々と安倍政権の議会民主政治冒涜を国民に訴えるべきだ。

 次の問題は分割されず原案通り審議が始まる場合のことだが、本会議での趣旨説明と質疑となる。ここでも「平和安全法制整備法案」の内「・・法改正案」についてとし、分割して趣旨説明をする決議案を提出することや、委員会で各法案ごとに小委員会をつくって徹底審議することだ。以上のことだけで2ヶ月は抵抗できる。要は野党がどれだけ結束できるかによる。

 

 議会民主政治と憲法を護るための抵抗権の行使は、相手の出方で際限はない。要するに「知恵」の問題だ。国民の喝采が起きるまでやればよい。さすれば、次の国政選挙に向け、野党連合有利の展開になることは必定。奮闘を期待する。

 

            (平成の日本改革の原点は休みました)

 

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