「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―278

             日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

 

〇 安全保障法制関連法案を廃案にする〝死角〟がありますよ! 13

 (手段を選ばず、死に物狂いとなった安倍政権!)

 

 最近安倍首相の体調不良が報道され始めた。7月30日、官邸の首相執務室で異変が起きたとのこと。このニュースに注目すべきだが、このことは安倍首相の「安保法制」へのこだわりが、死に物狂いになっていると見ておかねばならない。

 そう言えば、このところ重要な国策を次々と、それも突然に、〝安倍首相の英断〟という世論対策で変更している。最初は「新国立競技場建設構想の白紙撤回」、次は「沖縄辺野古基地建設の一ヶ月中断」、「戦後70年談話の中に従来通り〝侵略〟と〝おわび〟を書き入れる」などなどである。

これらの重要国策は最初から問題がわかっていたことだ。変更だけで御茶を濁す問題ではない。突然の変更には釈明・お詫びが必要だ。この程度で内閣支持率を上げようとは茶番である。内閣支持率を上げて、「安保法制関連法案」を成立させようという魂胆が見え見えだから、昨週末の世論調査でも不支持率が増え続けている。子供だましもいい加減にして欲しい。

 

 本気で安倍政治を反省して、国民のための政治をやる気なら、まず「安保法制関連法案」を審議未了・廃案にすることだ。そして、8月11日に始まった川内原発の再稼働を中止することだ。そうすれば、本気度を信用しても良い。実は「安保法制」と「原発再稼働」は、数年後には日本国を破滅させかねない問題である。それは抑止力としての〝核武装〟に直結するからだ。この問題はこの程度に止め、後日論じることにする。

 要するに何が何でも「安保法制関連法案」を成立させると、全てを賭けて臨んでいるということだ。こちらも覚悟を決めて対応したい。

 

(「安保法制立法過程」にみる、非近代・非法治国家日本)

 

 数日前、ある専門家から「安保法制立案過程」についての内部情報を教えて貰った。改めてここまで日本の統治機構が劣化しているのかと驚いた。情報とはいえ、ほぼ正確な見方だと思うので紹介しておきたい。

 発案者は安倍首相ときわめて限られた外務官僚といわれ、両者の共通点は右翼思想で、対米追随論、性格が排他的幼児性と異常心理の持ち主と、内部関係者から評されているようだ。例の「法的安定性」発言で有名人となった磯崎首相補佐官などが、応援団の役割のようだ。

 この人たちの強引な手法で、アレヨアレヨという間に安保法制関連法案がつくられたといわれている。外務省や防衛省関係者の中には〝これではいけない〟と抵抗する人たちもいたようだが、異常な最高権力者におののき状況に流されてきたわけだ。しかし、抵抗する人は残っているようで、防衛省の内部資料が漏れ出して、11日の参院平和安全法制特別委員会は紛糾したまま散会し盆休みに入った。これが政治レベルになると、自民党では国政選挙の公認外しを恐れ、安倍首相に逆らえないというから政治のダイナミズムなど死語である。公明党では連立から外れるのが怖く屁理屈と嘘言で異常政権に追随する悲劇となる。

 

 これが近代国家・法治国家日本といえるだろうか。官界にも政界にも、偏差値が高くないと入学でいない東大や京大などで学んだ人たちで溢れている。どうも国家公務員試験などは自己保身の上手な人物を採用する仕組みが出来たのが、最近の日本国のように思えてならない。

 さらに困ったのは国会のだらしなさである。先日、参議院の特別委員会審議で、「後方支援で核弾頭を運べるか」と、鋭い質疑で政府側を震撼させていた。私に言わせれば、この質問者の発想は「修正論」に繋がることになる。「安保法制」は、憲法上制定してはならない要件を含んでおり、提案そのものに不条理があることを徹底させた上の追及でなければならない。

 本来、国会側が追及すべきは安倍政治が提示した「限定的集団的自衛権」というものの定義とか、性格とかが、国連憲章や国際法に規定のないことを明確にすべきだ。厳しくいえば、安倍首相の主張する「集団的自衛権」とは、本物の国連憲章に規定するものではなく、「集団的自衛権擬(もど)き」もので、場合によっては憲章違反の名称詐欺かもしれない。

 

 戦前の満州事件などは「自衛権擬き」理屈で侵略が始まったことを忘れてはならない。政治における「擬き」行為が、無責任体制から生まれたことは歴史が証明している。安保法制の立案過程が、病的ともいえる狂気で推移したことを、国民に証明できない野党なら議会政治に不要である。

 安倍「安保法制」の最大の特徴は、わが国の安全保障政策の構造を大きく変化させたことだ。これまでは、どうにか「憲法」→「日米安保条約」→「安保関係法」→「日米ガイドライン」と、並べることが出来た。それが「日米ガイドライン」→「憲法」→「日米安保条約」→「安保関係法」の大化けしたことである。

 要するに、今年の4月27日、安倍首相訪米の際に「2+2」で合意した『日米防衛協力のための指針』のことである。これが集団的自衛権行使と裏表というかガイドラインのための安保法制といえる。この問題が国会の安保法制審議でほとんど論じられていない。

 小沢一郎代表が4月28日付けで「危険極まりない日米防衛ガイドライン」と談話を発表したのが、唯一の政党レベルでの動きであった。小沢代表は「世界のどこまでも自衛隊を派遣することができるようになり、これは明らかに憲法違反です」と警告している。このような基本問題の審議が、ほとんどなされていないことは残念である。終盤となる安保法制審議で、安保法制関連法案を廃案にするため、積極的に重要課題で安倍政権を追及できる体制を整備していく予定である。構想が決まれば会員諸兄にご協力をお願いすることになる。

 

(かつて違憲の法案を廃案にした衆議院議長がいた。

議長が腹を括れば廃案は可能)

 

 昭和49年1月、第72回常会が再開され直後、自民党は国民に公約していた懸案の『靖国神社法案』を提出した。この法案は、靖国神社を特殊法人・国有化するというもので、憲法学者や有識者は憲法20条(信教の自由)に違反すると反対運動を起こした。

 当時の衆議院議長は、前尾繁三郎という戦後の政界では理性派を代表する人物で、池田内閣の幹事長として、寛容と忍耐と所得倍増政治を演出した政治家であった。私は事務局から出た議長秘書を勤めていた。前尾議長は自民党籍を離れ、無所属で与野党公平な国会運営を目指していた。

 

 靖国神社法案の提出者である自民党長老議員は前尾議長と親しく、毎日のように議長室を訪れ、早期成立を要望していた。前尾議長は憲法20条との関係を危惧していたが、長老議員たちは、「衆議院法制局が合憲としたもので安心して欲しい」と言い続けた。自民党は内閣委員会で強行採決し、靖国神社法案は前尾議長の手元にきた。何時本会議に上程するかという政治問題となった。

 

「違憲立法を許すな」と、有識者を中心に国民運動が盛り上がり、野党も国会審議をストップさせて抵抗することになる。前尾議長のところに廃案とするよう陳情に来往した有識者の中に、マックス・ウェーバーの研究者で世界的に知られている大塚久雄博士がいた。大塚博士は「これを成立させることは、わが国の議会政治が世界の恥になる」と、詳細にその理由を説明してくれた。

 前尾議長は自民党長老議員の合憲論に疑問を持ち、私に極秘で憲法学者や司法関係者から意見を聴くよう指示し、約20名の専門家に面談した。結論は、成立と同時に訴訟が起こり、鳥居や社などが違憲の象徴として、国側が敗訴する可能性があることがわかった。前尾議長は「廃案とする」と決断した。

 

 その方策として、議事日程の編成権が議長にある規則を利用し、与野党の合意ができるまで議長が預かることにした。合意はできず、結局は参議院での審議が不可能な会期末ぎりぎりに、衆議院本会議に上程し、参議院に送付し廃案とした。安保法制関連法案が靖国神社法案のような状況ではなく直接の参考にはならないが。

 私が言いたいことは、参議院議長が与党から強行採決を強要されたとき、「憲法の原理を守るため、本会議には私の手で上程しない。成立させたいなら私の首を切ってからにして欲しい」と、谷垣幹事長に迫ることだ。衆議院での再議決となれば、大島議長が同様なことを谷垣幹事長に迫ることだ。国民世論がどう反応するか、安倍首相は政府の立場だ。責任は谷垣幹事長に集中する。

これが政治というものだ。                           (続く)

 

 (「平成の日本の政治改革の原点」は休みました)

 

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