「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―311

 日本一新の会・代表 平野 貞夫妙観

 

〇 辺野古基地問題で始まった沖縄県と政府の協議に思うこと!

 

 3月23日(水)、米軍普天間基地の辺野古への移設をめぐる裁判の和解を受け、沖縄県と政府が初めての協議に臨んだ。翁長知事は「辺野古が唯一の解決策という、かたくなな固定観念に縛られないで真摯に協議を進めてほしい」と要請したが、政府は耳を傾けることがなく、解決の困難さを予想させた。

 これより5日前の18日(金)、文京区シビック大ホールで、「オールジャパン平和と共生 安倍政治を許さない! 参院選総決起集会」が開かれた。第1部が各党代表の決意表明、第2部が「重要政策課題」で、私は「辺野古基地」を担当して説明した。内容は、2月14・15日と小沢生活の党代表と那覇を訪問したときの報告であった。報告で私が特に重点を置いたのは、『県民ネット』(翁長知事派県議団)からの強い要請は「本土での、辺野古基地建設問題が盛り上がらないことへの危惧である」とし、その理由を述べたことである。これには、各方面から反応があり説明をしておきたい。実は、メルマガ307号で報告した結びで私自身も不勉強さに不満を持っていた。


「安倍政権は〝法と行政で決定済〟として(裁判の)勝利に自信を見せているが、議会民主政治では民意の支持を得てこそ正当性がある。〝辺野古問題〟をテーマにした、国政・地方選挙で4回とも辺野古移設反対派が勝利した。法理として〝事情変更の原則〟により工事を中止し、米国と再交渉すべきである」


という部分である。

 

(オットー・マイヤーの「公定力理論」)

 

 もっと法理論として、論理づくりができるはずだと悩んでいた。その悩みを吹っ飛ばしてくれたのが、『世界』4月号の五十嵐慶喜法大名誉教授の論文〝「公定力理論」という「空洞の権威」〟であった。マダラボケの頭を振り絞って読んでみると、思い出したのは、19世紀のプロイセン憲法時代、オットー・マイヤーが行政学で論じている「公定力理論」である。「公定力理論」とは聞き慣れない言葉だ。またまた固い話になって恐縮だが、大事な課題でもあることから、敢えて説明しておきたい。
「公定力理論」とはドイツのプロイセン憲法で君主を絶対とする立憲君主制を維持するための理論である。君主の持つ行政権を議会や司法より優越させるもので、「公定力」とは「行政権の違法な処分であっても、権威あるものによって取り消されるまでは、何人たるもその効果を否定できない」ことといわれている。この思想は行政権(神たる君主の権限)には誤りがない」との思想を元に、「行政の無謬性」とか「行政の継続性」として現代でも生きている。

 

(「公定力制度」の明治憲法と新憲法の違い)


 明治憲法は「プロイセン憲法」のコピーといえる。「神である天皇制」を支えるため、マイヤーの行政法理論を当然のように取り入れ、強力な天皇官僚国家をつくった。明治憲法は「天皇を元首とし統治権の総覧者」に位置づけ(第4条)、「天皇を行政各部の官制、文武官の俸給、任免に関す権限者」とした(第10条)。

 さらに天皇の統治権を徹底させるため、国民から制限された代表者で構成された帝国議会で、「国務大臣と政府委員(各省の局長級の官僚)を何時でも貴族院や衆議院に出席して発言する権利を与えた」(第54条)。これが行政権の公定力の源泉となる仕組みだ。また司法権は法律により裁判所が行うと行政権よりは自立性を持たせたものの「行政官庁の違法処分等に関わる訴訟」は、行政裁判所を設けて司法裁判所から排除したのである(第61条)。
 戦後の日本国憲法は、君主的立憲制を廃止し、国民を主権者とする立憲民主主義に変更したはずである。国政を「国民の厳粛な信託によるもの」(前文)とし、国会を「国権の最高機関」(第41条)と位置づけた。行政権は「内閣」に属させ、その行使については「国会に対し連帯して責任を負う」(第66条)と義務づけた。また公務員を「全体の奉仕者であり、一部の奉仕者ではない」(第15条)とした。

 そして国民のために、行政に対して不服審査や司法権による行政裁判を保障し、行政にも「間違い」があることを前提とした。このような、憲法体制の変化・進化により「公定力理論」は消えたといえる。ところが消えたかに見えた「公定力理論」が、言葉を変えて時折、行政行為や裁判に生きかえっているのだ。「行政の継続性の保護」とか「行政の安定性」とか、「行政処分の信頼性の保護」という理屈で、国側の主張が正義となることがある。それが一貫した論理でなく、まだら模様に起きるので癖が悪く、扱いにくい。

 

(新憲法下の国会法に残った政府委員制度)

 

 明治憲法であれ、新憲法であれ、行政権は立法府(議会)と緊張関係にあるものだ。「公定力理論」の下の憲法では、官僚幹部が議会に出席して、発言する権利を持つことは不思議なことではない。明治憲法では前述したとおり第54条にその権利を規定した。
 国民主権を基本とする新憲法では、「内閣総理大臣および国務大臣は、議案について国会で発言する権利と、国会から答弁又は説明を求められたときの出席義務」を規定している(第63条)。「公定力理論」が消えている以上、当然のことである。ところが明治憲法の「政府委員」という制度が新憲法から消えたものの、国会法の中に潜り込ませて存在させたのだ。

「第7章 国務大臣及び政府委員」として、第69条「内閣は、国会において国務大臣を補佐するため、両議院の議長の承認を得て政府委員を任命することができる」と。 そして、国務大臣と同様に議長や委員長に通告すれば国会で発言できるようにした(国会法第70条)。事実上、明治憲法時代の帝国議会を復活したのである。新憲法下の閣僚の資質が劣化したため、官僚支配の議会政治が我が国では続くことになる。「公定力理論」は、議会民主政治の下で名を変えて、実態は機能しているのである。

 

(「小沢―平野ライン」による政府委員制度の廃止)

 

 小沢一郎という政治家は、27歳で衆議院選挙に挑戦したとき「官僚政治を打破しなければ、日本に真の民主政治は生まれない」と訴え、当選してきた。私は父・小沢佐重喜からの縁で、さまざまな場面で相談を受けてきた。政治改革の1丁目1番地は「衆議院の中選挙区制度の改革」と、「国会の政府委員制度の廃止」の2点だった。官僚に政策決定を委ねないためには、これらの改革は是非とも必要であった。
 選挙制度は平成6年1月、細川非自民政権で実現した。政府委員制度の廃止は官僚の抵抗を押し切って平成11年8月、小渕自自連立政権で実現した。国民から選ばれ自立した政治家が官僚を指導して、国民生活を向上させる制度が一応実現したのである。
 しかし、その後の政治劣化は著しい。その原因を「小沢―平野ライン」の改革による、との批判を受けている。
私たちの改革の本来の目的は、新憲法になっても続く「公定力理論」による行政権優位・官僚支配の打破であった。その官僚の恨みが、小沢陸山会事件の捏造になった。
 私たちはそのための改革を行ったはずであった。平成21年に民主党への歴史的政権交代により、改革は成功したと思ったのも束の間、官僚政治の打破を放言していた菅直人首相が、一瞬にして官僚支配の下僕となった。以後、日本の政治は修羅の道を進んでいる。現在の安倍自公政権は安倍首相の異常精神状態を、一部の官僚とそのOBたちが、共存・寄生関係にある、大資本の利益のために活動しているといえる。その意味では、「天皇」のためとした明治憲法の官僚時代よりも「公定力理論」がより巧妙に再生し質(たち)が悪くなっている。俗事のことは制度だけ改善してもダメだ。携わる人間が変わらなくてはどうにもならないと思う昨今である。

 

(結び)普天間基地を辺野古に移設することを、沖縄県と名護市が厳しい条件を付けて了承し閣議決定が行われたのが平成11年、以後、政治家・官僚・ゼネコンの利権争いで宙ぶらりんとなっていた。平成25年に、仲井真知事が辺野古埋立を承認した。これは直近での知事選挙での県民との約束を翻弄したものであった。その後「辺野古移設」を中心テーマにした国政・地方選挙が4回行われたが、すべて移設に反対する民意が圧倒的勝利となった。
 この事実を無視して安倍政権は仲井真前知事の埋立承認を無効とする翁長知事の決定を冒涜する訴訟などを起こし、あり得ない「公定力理論」を背景に、行政権優位を司法権を活用して行おうとしているのだ。「県民ネット」が危惧するように、反対運動が本土で活発化しないのは、最近悪質化した「公定力理論」を背景に、行政権優位の安倍政治に対する憲法学者や有識者の問題提起がないことにある。辺野古問題は、安保法制に劣らない憲法の重大な危機である。

 憲法学者よ、何をしているのか。

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