「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―58

日本一新の会・代表 平野 貞夫

 

 「日本一新の会」のメルマガ発行が、1年を迎えました。維持会員をはじめとして、さまざまに協力していただいた皆さまのおかげであり、心から感謝の意を表します。多くの維持会員のご意向もあり、引き続きこの活動を行っていくことになりました。

 なお、これまでは土曜日を発信日としていましたが、いろいろご意見をいただき、今号からは木曜日発信を原則としますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 

◎内閣不信任決議案物語 

 

1、内閣不信任決議案が否決されると、内閣を信任したことになるという暴論と愚論

 固有名詞は出さないが、政治家・学者・マスコミ・有識者たちの中に、「内閣不信任決議案を出しても否決されれば、信任したことになるので提出すべきではない」と主張する人たちが大勢いる。この国会でも菅内閣不信任決議案の話題が出ると、与野党の相当な立場の政治家をはじめ、得意顔で語る有識者が大勢いる。議会政治の本質を知らないことを証明する愚論だ。

 内閣不信任決議案というのは、衆議院で多数を持つ与党から提出されるものではない。少数派から提出されるものだ。従って与党に特例のことがない限り否決される。何故、少数派が提出するのか。それは時の内閣が、国民や国家のためになる政治を行っていないと少数派が判断し、国民に訴える必要があるとする場合だ。衆議院で50名の賛成者があれば提出できる。本会議の内閣不信任決議案の審議で、少数派は内閣の悪政を批判し、国民に訴える権利である。

 通常は与党の多数派によって否決される。それは少数派の主張が生かされなかったことで、否決により少数派が内閣を信任したことにはならない。それを日本人の多くは内閣が信任されたと思い込み、少数派も信任に荷担したという三百代言的論理が跋扈しているわけだ。この理屈だと、少数派は永遠に内閣不信任決議案を提出して国民に政治的アピールをすることはできない。衆議院が内閣を信任する制度としては「内閣信任決議案」を可決することである。これは憲法69条に規定されている。しかし、わが国ではこの制度が活用されたことがない。

 しばしば、野党の抵抗で閣僚の不信任決議案が連発されるときなど、事前に「内閣信任決議案」を提出して可決させ、野党の議事妨害を封じようという動きがあった。この場合、衆議院事務局は「少数派の法規にもとづく抵抗、意見の表示権は議会政治の根本原理である」とし、政府与党を説得してきた歴史がある。少数派の提出した「内閣不信任決議案」を否決したことで、その内閣の政治運営・政策などすべてが信任されたという発想は誤った考えである。多数派の政府与党によって制定された法令や実施される政策は、多数決により国家の意思であるが、それが正当で信任されるものとは別の問題である。

 議会政治の基本は、多数決によって定められる国家意志が、適切で正当かどうか常に少数者によってチェックできることである。内閣不信任決議案は、少数派が内閣の悪政ぶりを国民に訴え、国民の意思により、少数派が政権を担うための行為ともいえる。否決されることによって、内閣を信任し抵抗できなくなるようなものではない。昭和時代にそんな発想をする政治家は存在しなかった。平成時代になって、内閣不信任決議案の提出を避けるため、そんな論理を主張する政治家が増えた。

 

2、内閣不信任決議案はどんな政治状況で可決されたか

 内閣不信任決議案が可決される時は、必ず政府与党内で抗争のあるときである。昭和34年に私が衆議院事務局に勤務して以来、2回可決された。その背景を説明しておく。

《昭和55年5月の大平内閣不信任決議案可決》

 第91回通常国会は、野党の追及も少なく平穏に終わるかに見えたが、会期末、飛鳥田社会党委員長と、竹入公明党委員長が会談し、野党の存在を目立たせるために、大平内閣不信任決議案を提出することで合意した。大久保直彦公明党・議院運営委員会理事が両党首の代理で私を呼び出し、内閣不信任決議案の「提案理由の文案」を作成して欲しいといわれた。私は「大平内閣は格別な失政もない、不信任案の理由文をつくるのはむづかしい。それに昨年の『40日抗争』で、田中・大平派と福田・三木派の対立があり、自民党から欠席者が出れば可決になる可能性がある」と断ったが、無理に書かされた。

 社会党・公明党は「そんなことあるわけがない」と、恰好つけのために提出した。結果は福田・三木派が本会議を欠席し、不信任案は243対187で可決された。大平首相は衆議院を解散、衆参同時選挙となった。選挙中大平首相は心筋梗塞で死去した。この内閣不信任決議案に正当性はなく、当時、衆議院事務局の議院運営委員会担当であった私は、日本の議会政治に失望した。

 

《平成5年6月の宮沢内閣不信任決議案》

 第126回通常国会は、政治改革を巡って与野党とも党内で対立抗争があった。自・社55年体制が流動化していた。特に自民党は国政選挙で3回も政治改革を公約していた。宮沢首相も国会答弁やマスコミで、政治改革の実現を約束した。ところが自民党執行部が抵抗して実現を放棄した。宮沢首相の指導力を問題とし、社会党・公明党・民社党・社民連が「宮沢内閣不信任決議案」を提出した。

 自民党から何名が賛成するか、見通しのつかない本会議が開かれ、賛成255、反対220で可決された。自民党から39人が賛成し、16人が欠席した。羽田・小沢グループの「改革フォーラム21」は35人全員が賛成し注目された。私は平成4年7月に参議院議員となっており、この内閣不信任決議案をめぐる宮沢官邸との裏交渉や、野党との非公式折衝に関わった。宮沢政権の敗因は梶山幹事長の判断ミスで、自民党の造反を3~4人と見ていた。

 宮沢首相は直ちに衆議院を解散した。羽田・小沢グループは、公約を破ったのは自民党執行部であり、彼らを党規委員会に提訴すべきとして、離党する考えはまったくなかった。解散当日の深夜、私が提訴文を執筆中に、内閣不信任決議案に反対した武村正義氏のグループ10人が、「新党さきがけ」を結成した。となると賛成したグループが党に残ることは筋が通らないとなり、「新生党」を結成することになる。総選挙を経て、同年8月、「非自民細川連立政権」の樹立となる。この内閣不信任決議案の提出には正当性があり、与党で賛成した議員の発想と行動も、議会政治の本旨に沿ったものだ。

 

3、菅首相内閣不信任決議案に対する考察

 自民党と公明党は「菅内閣不信任決議案」を、6月1日にも提出する方針である。谷垣自民党総裁によれば、「菅首相では東日本大震災の復興を進めるには無理だ」ということを理由としている。東日本大震災や津波による被災地対策の著しい遅れに加えて、福島第1原発災害の情報隠蔽で放射能被害が日本中に拡大し、菅政権が立ち往生する中で、野党としては当然のことだ。それに、尖閣列島の中国漁船船長釈放問題での責任逃れや、在日韓国人からの違法献金など、不信任決議案提出の理由にはこと欠かない。

 問題は与党民主党から何人の賛成者や欠席者が出るかである。数によっては菅内閣不信任決議案は可決され、衆議院解散か、総辞職という政局になる。ところが「この国難の混乱で首相を変えるとは何事か」という意見がある。菅首相や岡田幹事長などは、必死に内閣不信任決議案の成立を阻止する工作を行っている。政治状況は平成5年の宮沢内閣不信任決議案に似ている。民主党所属議員の多くは先行きの見えないこともあって混乱している。冷静な考察が必要だ。

 菅政治の特徴をひと言でいうなら「日本の議会民主政治を崩壊させた」ことである。そのために東日本大震災への対応で、与野党はじめ各界を結集させ挙国体制がつくれないのである。

 民主党所属国会議員はよく考えて欲しい。菅政権となって、政権交代で国民と約束した理念と政策がどうなったか。「国民の生活が第一」の政治目標をズタズタにし、自民党より悪い政治を指向している現実をどう考えるのか。さらに独裁・独善の党運営により小沢元代表を党員資格停止とした。自民党政権が「検察ファッショ」で仕掛けた「小沢排除」を、こともあろうに引き継いだのだ。裁判では、裏金を運んだと主張する元水谷建設社長の運転手が「記録も記憶もなく、検事調書の訂正を求めても応じてくれなかった。多少、ハラがたっていますね」と法廷で証言し、検察とメディアが捏造した疑惑は消滅した。

 菅首相の人間としての最大の欠点は、「嘘と誤魔化し」の政治活動であることだ。師と自称する市川房江先生も同じことを指摘している。国家や国民を犠牲にしてでも、保身のために嘘を通す。先進議会政治を標榜する国なら生きることは許されないことだが、日本人も、日本国会も追及を行わない。これは亡国への道だ。

 民主党への政権交代の原点を、菅首相が勝手気まぐれに否定したことは国民に嘘をついたことである。多くの支持者から怒りを受け、今や民主党は崩壊状態である。昨年の尖閣列島の中国漁船船長釈放問題も、自分の意志を検察判断と誤魔化し、司法権を冒涜、責任逃れで国の権威を失わしめた。

 東日本大震災の対応で菅首相の「嘘政治」が、日本人と日本国の存立にかかわる瀬戸際にきている。それは福島第一原発事故を拡大させた原因は、菅首相の3月12日早朝の「思いつき視察」だ。視察強行のため、政府のERSSがベントを緊急に必要とするとした情報を官邸が隠蔽したため、ベントが遅れ放射能被害が日本中に拡大したことだ。このように菅政権は嘘に嘘を重ねていたが、政府の内部告発と思われる決定的証拠が報道されるようになった。

 在日韓国人違法献金問題を抱えた菅首相が、保身延命のために東日本大震災を利用し、日本人と日本国を犠牲にしていることは許せないことだ。この現実を民主党国会議員は直視すべきだ。菅首相の「嘘政治」を続けるなら、東日本大震災の復旧も復興もなく、日本国は放射能列島となろう。民主党国会議員は、「政治家の良心」をもって「造反有理」を実行し、民主党の出直しを断行すべきである。

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

nipponissin1

Author:nipponissin1
   代    表 : 平野 貞夫
   顧    問 : 戸田 邦司
   事 務 局 : 大島 楯臣

カレンダー
02 | 2017/03 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
動画
 
最新記事
リンク
一新のトランク
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
RSSリンクの表示
Translation Tools
QRコード
QR
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!
Powered By FC2ブログ