「国民の生活が第一、自立と共生、政治の根本について議論する広場」

「日本一新運動」の原点―75

日本一新の会・代表 平野 貞夫

 

(憲法原理を崩壊させた陸山会事件の判決)

 東京地裁の登石郁郎裁判長は9月26日(月)、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、虚偽記載罪に問われた元秘書3人に対して、それぞれ有罪の判決を言い渡した。

 問題は有罪とした理由である。検察が背景事情として説明した「水谷建設からの裏金1億円」について、証拠に基づく実証がまったくなく、状況証拠に推定に推定を重ねて、事実として認定したのである。

 これは、憲法の原理を崩壊させる重大な問題であり、恐らくわが国裁判史上これほど司法権の機能を逸脱し、かつ破廉恥な判決は始めてであろう。さらに、劣化した検察の主張に上乗せするような論理で、政治に干渉した判決であり、司法ファッショの時代が全開となったことを証明するものである。これを許容するなら、議会民主政治をわが国で機能させることは末代まで不可能となる。以下にその論拠を述べたい。

① 判決が、政治資金規正法違反で有罪とした根拠は「水谷建設からの裏金」を事実だと裁判官が認定したことである。検察はこの裏金を実証するため、巨額な経費と、検察の総力をあげて約二年もの年月をかけて徹底した捜査を行った結果、起訴できなかった問題である。図らずも検察は面目を保ったが、虚偽記載の背景説明として、水谷建設関係者を検察に有利になるよう追いつめ、裁判で証言させたのである。勿論、元秘書らは裏金を否定し、水谷建設の関係者の中にも、裏金の引き渡しを否定する証言をした人物もいる。こういった矛盾のある「裏金」を、実在のものと東京地裁が推定するというならともかく、個人的信条をもとに推定で「認定」するというなら、それを検察に実証させるべく、起訴のやり直しを命ずるべきである。

 虚偽記載でだけで有罪とすることに論理的限界があり、「裏金」を事実と認定することで有罪の判決を誘導したと思われる。言い替えれば、むりやりにでも「裏金」を認定しなければ有罪の判決ができなかったのである。

 司法の生命は「法と証拠」によって判断することである。この判決はこれをまったく無視し、検察は疑いをもったが、起訴したくてもできなかった「裏金」を、東京地裁の裁判官が検察に代わって起訴したことと同じことになる。一億円もの裏金となれば、所得税法上の問題もある。さらに、政治がらみとなれば、公職にある者等の「斡旋利得処罰法」など、重罪の法令がある。

 「法と証拠」論からいえば、3人の元秘書は無罪であるべきだ。虚偽記載罪に限定すれば違法性はない。裁判官が敢えて有罪にこだわるなら、当該事件の公訴を棄却して「裏金」の実証をすべく、検察に再捜査を命ずるのが健全な司法の在り方である。

② 裁判所が、検察でさえ起訴できなかった問題を、根拠なしに状況説明だけで有罪にすることになれば、「疑わしきは罰せず」という憲法原理は崩壊する。今回の判決は「疑わしきは罰すべし」という判例となる。

 となると、人類がこれまで営々と築き上げた基本的人権はどうなるだろうか。憲法第37条は「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する」と規定している。近代国家の普遍的原理を冒涜した裁判は公平とは言えない。また、憲法第31条の「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない」と規定する、罪刑法定主義に違反する可能性がある。

 さらに重大な問題は、この判決すなわち実証性のない状況証拠だけを根拠にして、政治案件について有罪としたことである。恐らくわが国の裁判史上初めてのことと思われる。これは司法権が議会民主政治を支配することとなる由々しき問題である。証拠や実証のないことを、裁判官が推定を重ねて個人的価値観をもって認定し、検察が起訴しなくても有罪とすることになれば、健全な議会民主政治は成り立たない。

 今回の場合、石川衆議院議員がその対象となったが、石川議員を選んだ有権者の国民主権はどうなるのか。また、代表制民主主義による石川議員の国会議員としての諸権利を奪うことになる、きわめて重大な問題のある判決である。

 

(「司法ファシズム」という暗黒国家)

 陸山会問題について、私が承知している経過を振り返ってみると、日本は「司法ファシズム」という暗黒国家になったといえる。

 平成21年3月1日、私は千葉県知事選挙の関係で、当時の法務大臣・森英介氏に会った。同席していた堂本知事に森法相が話した内容が、今もって頭から消えない。「平成になって、日本の政治を混乱させ破壊したのは民主党代表の小沢一郎ですよ。悪い政治家で、それを手伝ったのが平野さんですよ」という趣旨の話。

 小沢さんへの、明らかに悪意のある言い方に何かあるなと気になった。思えばこれが陸山会事件の始まりであった。2日後の3月3日、西松事件に絡めて大久保秘書の逮捕となった。一週間後、私は小沢代表に会い「政権交代を阻止するため、貴方は麻生自民党政権から狙われている。これは日本の民主主義のあり方の問題だ。議会民主政治を守るために国民運動を起こしたい」と進言した。

 小沢代表は「僕はそんなに偉くないよ。法に反することは何もやっていない。特捜がどんな出方をするか様子をみよう」ということだった。大久保秘書逮捕は小沢代表の退陣で効果がうすくなり、次に狙われたのが、石井一副代表の「郵政不正事件」だった。村木厚子厚労省局長の逮捕、起訴がデッチあげということが判明し、特捜の廃止論まで出る始末で、検察の信用は失墜していった。

 それでも民主党への政権交代は実現した。国家権力の守旧派が必死になったのは、「小沢改革の阻止」であった。「小沢排除」が民主党権力内でも行われ、特捜が目をつけたのが、水谷建設の裏金話を政治資金の虚偽記載と結びつけて犯罪をデッチあげることだった。検察は総力を挙げて小沢氏本人を起訴しようとしたが、犯罪事実を立証できるはずはなかった。次の策として、3人の元秘書の「法と証拠」を無視した起訴であった。

 守旧派権力が「小沢排除」の最後の手段に使ったのが、検察審査会であった。市民団体に名を隠した問題集団が、守旧派権力と共謀して、違法な手続を重ねて小沢氏本人を強制起訴した。10月6日から公判が始まる。その直前に憲法原理を崩壊させる判決が行われたのである。

 私は、7月末『小沢一郎完全無罪』(講談社α文庫)を刊行し、その文庫本まえがきで、「小沢問題に見る国家機能のメルトダウン」という文章を掲載した。その中で、わが国の政治的社会状況を「新しいファシズム」と定義しておいた。平成21年3月から始まった国家権力の「小沢排除」は、政権交代を阻止するため麻生自民党政権から仕掛けが始まっている。社会心理的暴力装置となった巨大メディアを活用して、政治権力と検察権力が推し進めたものである、という趣旨である。

 その「新しいファシズム」に、司法権=裁判所は組み入れられていないと私は推測していたがこれが甘かった。東京地裁の陸山会事件判決は、裁判官が検察とは関係なく風評だけで有罪の判決ができる道を開くことを可能にした。「新しいファシズム」の正体は「司法ファシズム」ということが判明した。憲法原理を守るべき裁判所が暴力装置となって民主主義を崩壊させている。これは恐ろしいことである。

 

(国会議員よ目を覚ませ!)

 3人の元秘書への、憲法原理を崩壊させる破廉恥な判決にもかかわらず、野党は石川知裕議員に対して議員辞職勧告決議案を提出した。自民党の谷垣総裁、公明党の山口代表、社民党の福島党首は、それぞれ司法試験に合格した弁護士である。この人たちが、従来の政治家に対する判決と同じレベルで考えて、議員辞職勧告決議案を提出する不見識さに、生涯を国会とともに過ごした私には暗澹たる思いである。
 彼らは、憲法原理をまったく知らないようだ。否、なまじ憲法原理を知ることで、司法試験に合格できないのが日本の法曹界の実態のようだ。判決を出した裁判官と同じレベルといえる。「司法ファシズム」に入り込み、それを推進しているのが国会であるとすれば、日本の国家統治はきわめて危険なところにあるといえる。

 今回の判決を、議会民主政治の危機と感じない国会議員こそ辞職すべきである。明日は我が身と思うことができないなら、胸の議員バッジは返却すべきである。小沢氏の証人喚問論など、公判中の事案を調査できないという、国会の基本ルールを知らない愚か者としかいえない。

 議会民主政治が「司法ファッショ」で叩きつぶされようとしていることに、敢然として立ち向かうのが国民の代表者たる者の責任ではないか。

 劣化した検察や裁判所の尻馬に乗って、自分のことしか頭になく、党利党略に終始した政治が、昭和の初期に日本を最大の不幸に陥れた歴史を思い出してもらいたい。加えて、私たちの国が様々な危機に瀕している今こそ、国会議員の使命を果たすべきである。

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